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それはあっという間の出来事だった。 刀を持った男ら三人と、刀を持たぬ目の前の青年。力の差は歴然だ。誰もが青年が負けると思ったことだろう。 しかし、青年は思いがけぬ行動に出る。男らに向かって、砂を蹴りあげたのだ。 この時代、刀と戦うなら刀で。そんな認識が一般的な中、砂を蹴りあげるという、めちゃくちゃな戦い方は男らの隙をつくる。 そして、青年は襲いかかろうとした男らの足に、自分の足を引っかけた。 男らの刀は空振りし、前のめりに大きく倒れる。 どすん。場違いな鈍い音が響き、周りが一瞬静まりかえる。 手足を投げ出した状態で、倒れこむ三人の男達。当然、武器も手放している。 「やっぱり、男の風上にもおけねぇや。」 「よぉ、兄ちゃん。」 「さすが、多摩のバラガキだ。」 今までの緊張した空気が、嘘だったように、周りから歓声があがる。 「覚えてろよ。」 居たたまれなくなった男らは、そそくさとその場を去っていった。
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