背乗り(はいのり)

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 メールで通達される、現場へ行き警備の仕事をする。  警備と言っても、実際に事件などはそう起こるもんじゃない。 ただ、朝が来るのをひたすらに待てば、その日の仕事は終わる。ただそれを繰り返すだけの俺のつまらない毎日。 「今日の現場は・・・と」  夕方に起きた俺は、スマホを片手で操作して本部から送られてきた勤務表を確認する。 「上野の梅坂屋裏口警備か・・・・」  店内改装で深夜に工事が入るらしい。  詳細をたどって、俺はため息をついた。 『警備人数 3名』  本当は1人の方が気楽だが、まぁ仕方がない。  台所へ行くと、俺の分の食事が用意されていた。  母親がパートへ行く前に作ったものだ。  電子レンジで温めて、テレビをみながら飯を食う。  風呂に入って、身支度を整えて仕事へと出かける。  本当に笑ってしまう程に、俺ってやつは何が楽しくて生きているのかと自分でも疑問だ。  職場に着くと、爺さんが1人。  手にはワンカップを持って、鼻の頭を赤くしている。  おいおい、これから仕事だってのに普通酒飲むか? 普通が何かなどわからないが、流石にこれはないだろう。  爺さんは俺に気づくと、慌てて飲みかけのワンカップを背中に隠した。  いや・・・今更隠しても全部見てたし。  俺は爺さんの前を素通りし、リュックから警備服のジャケットと帽子を取り出し身に着けた。  ふと見ればさっきの酒じじぃが、ニタリと笑って俺を見ている。 「俺ぁよ、里中ってんだ。よろしく頼むわ」  俺が注意しないことで、俺を仲間と思ったのか、それともこいつはちょろいと思われたのか、酒じじぃは隠しもせずに俺の前で隠したワンカップを取り出し飲み始めた。  こういうじじいには関わらないに限る。  俺は酒じじいを無視して持ち場に着いた。 「なぁ、もうひとりの、榊原ってやつはどうした?」  なぜ俺に聞く。知るわけがないだろう。 「なぁ、兄ちゃんよぉ・・・ひっく」  まったくこの酒じじいは仕事する気があるのだろうか。というより、よくこれでクビにならないものだ。 「なぁ、兄ちゃんよー、シカトすんなって」
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