漆黒!

5/10
前へ
/10ページ
次へ
ところが、三日経ち、十日が過ぎても俺はクビにはならなかった。 曹雷さまからは、相変わらずどうでもいい雑用が山ほど持ち込まれる。 毎回怒鳴られはするが、慣れ切っているからさほどこたえない。 それをいいことに、俺は煤をこね回すことに明け暮れた。 この辺りに松の木が多いのは幸いだった。 松ヤニのついた木切れの方が煤がよく取れることもわかった。 時には例の悪ガキ三人組もぶつぶつ言いながら手伝ってくれる。 生意気な楊瑞は、ちっちゃな大人のような口をきく。 「ゲホゲホ。煙たいなあ。おじちゃんと同じくらい(くすぶ)ってるなあ、この木切れ」 余計なお世話だが、俺もそう思った。 「おじちゃん!これやって(もう)かるのかい?」 元気のいい崔俊がもっともなことを聞いてきた。 「いいや、全く」 「えー、そんならやめるー」 「そういうな。俺が偉くなったらちゃんとおごってやる」 「それはいつ頃になるの?」 あいかわらず辛口な文益は無表情でちょっと怖い。 「そうだな、二千年ぐらい後かな」 fb71b8e0-47f0-41b2-bd72-0522d065371f
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加