42人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなに晴れやかな顔をした曹雷さまを俺は知らない。
ということは、ようやく俺をクビにすることを決めたのだろう。
遅すぎるくらいだが。
「譚封月。すぐに呉永思さまの所に行け。おまえはなにをするかわからん。口答えなど許されんぞ!間違っても寄り道などするんじゃないぞ!」
曹雷さまは、息の続く限りにまくし立てた。
呉永思さまは曹雷さまの上役なので、俺にとっては雲の上のお方である。
「おつかいですか?あ、汚した机はけずっている最中です。棚の修理のやり直しもまだですが」
「おまえはこれ以上部屋の物に触るな!なにもしゃべるな。これでおまえの顔を見なくてすむと思うとすがすがしくてしょうがない。なにも聞かずに今すぐ行け!!」
「行きますよ。行きますがなんの用事です?というか、行ってもいいんですか?」
整理していない木簡が山になって倒れかけている。
あれはなかったことにされるんだろうかと考えていたら、ぐいぐい背中を押された。
「わしはこんなに怒鳴らずにすんで部屋が広くなっていいことばかりだこの野郎!とっとと行けーーーー!」
部屋はともかく曹雷さまの額もずいぶん広くなったなあとしみじみ思う。
事情はよくわからないままだったが、俺は呉永思さまのもとへと急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!