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「ねえ、おじちゃん!なにこれ!泥だんご?おいらたちも遊ぶー!」
はじめは遠巻きに眺めていた三人の子どもたちが、だんだん近づいてきた。
よくあることだが、俺は遊んでいるわけではない。
まだそれほどおじちゃんでもないし、譚封月という名前もあるんだとぼやきかけてやめた。
子ども相手に大人げないからだ。
「おまえら、少し離れろ。絶対触るなよ。このだんごには漆が混ぜてある。かゆいくらいじゃすまないぞ、はれあがって痛くて眠れなくなるくらいだ」
子どもたちは見事なほどにサッと退いた。
そう、それでいい。
「そんなあぶないものでなにしてんのー?」
三人組の中で一番大きい元気な子どもが、目をきらきらさせてのぞきこんだ。
あぶないものほど興味が湧くものだ。
俺もそんな子どもだった。
「大事な仕事さ。そうだ、おまえら、ひまなら重大な任務をあたえよう」
俺はまじめくさって提案してみた。
「えー、おいらたちおじちゃんみたいにひまじゃないんだよ」
「かわいくねぇな。せっかくそこにいるんだから手伝え。この入れ物にあっちの川の水を汲んできてくれ」
子どもたちは不満そうに口をとがらせた。
「ほら、これやるから」
俺は持ってきた桃を子どもたちにわけてやった。
三人は喜んで器を持って川へと向かった。
わがままでけちんぼな曹雷という役人が俺の上司である。
その困った上司の家の庭に実っていた桃を内緒でもいできたモノだ。
俺の懐は痛まないので問題はない。
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