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今にしてみれば、おかしかったとは思うのだ。
何故妻が俺のような冴えない中年男と結婚したのか。
自分の結婚相手の事ながら、妻は美人だ。
十人並みと言う言葉が有るが、それどころではない。むしろ、超の付くほどのド美人だ。
結婚前後には式に出席する知人が妻の容姿を見て目を剥き、二度見三度見した挙げ句、驚きとやっかみの入り混じった目付きで馴れ初めを知りたがったものだ。それも、ちょっと異常とさえ思える食いつきようで。
俺は知人の節度を弁えない不躾なまでの野次馬根性を少しうとましく感じながらも、優越感に浸りもしたものだ。
良いだろう。羨ましいだろう・・・と。
びっくり仰天有頂天、調子に乗りすぎ増長テン。全く高額宝くじの一等を引き当てたような気分だった。
こんな俺でも幸せになれるんだ。幸せになっても良いよね。神様ありがとう。
妻とは婚活アプリで知り合った。交際も妻の方が積極的で、あれよあれよと言う間に結婚にこぎつけた。
交際期間はとても短く、もう妻に押し流されるようにして所帯を持つに至った。
結婚前俺は、
「本当にこんな俺で良いのか。」
と真剣に妻に尋ねた。
妻の返事は、
「何言ってるの。貴方以外に私の夫になって欲しいなんて考えられないわ。貴方はきっと私を幸せにしてくれると信じてる。」
であった。
本当に本当に、本当に夢のような気分であった。
今日、保険会社から問い合わせが有った。私の掛金が突然跳ね上がっているが、何か理由が有るのだろうかと。
死亡時の保険受取額を見て私は呆然とした。受取人は言うまでもなく、妻である。
さて、妻はどのようにして私を殺すつもりなのだろう?
私は、妻の願いを叶えてやるべきなのだろうか?
幸せにしてくれると信じてる、と言った妻の。
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