✳続編 〜王子様の寵愛は永遠に〜

41/54
前へ
/99ページ
次へ
✳✳✳  幸せなひとときを堪能してビルを出ると、空にはぽっかりと黄金の満月が浮かんでいた。  秋終わりかけの十一月は肌寒くて、薄手のコートが欠かせない。  慣れ親しんだ複合タウン内を、永斗さんと手を繋いでレジデンスまでゆっくり歩く。 「久しぶりのデート、楽しかったです。こうして、ふたりになるのは、出産してからはじめてですね」 「これから、少しずつこういう機会も増やせたらいいね。たまには息抜きも必要だよ」 「ふふ、ありがとうございます」  繋いでいる手はとても温かい。  絡み合わせた指が、寒さから守るように甲を撫でる仕草にキュンとする。  そうなふうにして、いつものように他愛のない会話を重ねながら歩いていると、数分ほどして我が家が見えてきた。  結構ゆっくり過ごしてしまったため、斗真とご両親のほうが先に家に到着しているかもしれない。  そんな思いが過ぎったときだった。 「――あ、母さんからだ」  会話の途中で永斗さんが、スーツの胸ポケットから振動したスマホを取り出してハッとした。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2576人が本棚に入れています
本棚に追加