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「こんにちは⋯⋯島田さん」
声のしたほうを見ると、ベッドルームの入口から、桃色のパジャマにカーディガンを羽織った来美さんがひょっこり顔を出していた。
小柄な身体が、以前よりも小さく見える。
「お加減の方はいかがですか? 永斗さんに頼まれていこちらをお届けに参りました」
先程ダイニングテーブルに置いた紙袋をちらりと見やる。
「ほ、本橋屋の⋯⋯和菓子! でも今日、会食があったんじゃありませんか?」
「⋯⋯それについては、後ほど永斗さんにお聞き下さい」
言えば愚痴になりそうだ。
しかし、良かった。起こす手間が省けた。
パジャマだというのが、ほんの少しだけ落ち着かない気分にさせるが。
体調が良さそうな彼女をリビングへとうながし、レモンティーを前においた。
「ありがとうございます⋯⋯ちょうど、喉が乾いて起きてしまって」
そう言って、ソファ掛かっていたブランケットを膝にかけて、カップに口をつける彼女。かけていた眼鏡が一瞬でくもる。
その横に立ち、小皿に和菓子を添えて差し出した。
「こちらも食べれるのであれば、どうぞ」
「ありがとうございます。食べれそうです」
嬉しそうに顔を綻ばす彼女は、身体が一回り小さくなったかと思ったが、お腹のあたりはふっくらしている。
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