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「ごちそうさまでした。わざわざすみません⋯⋯」
「いえ、昨夜からあまり食事を口にしていないと聞いていたので、ホッとしました」
食べ終えた彼女は、先程よりも少しだけ顔色が良くなったようにも見える。
しかし、いつも小動物のように動いてる彼女が、重たそうに座っているところをみると、常に船酔い状態というのは本当なのだろう。
それを見て、少しだけ心配になりつつ、お替りのレモンティーをテーブルに置く。
彼女は「ありがとうございます」と頭を下げ
「なんのお構いも出来ずすみません。吐き気も前より収まって、食欲も少しずつもどってきてるんですが、昨日と今日は――⋯⋯」
そこで一度言葉を止めて、「はっ」という顔をした。
「もしかして、だから和菓子を持っていくようにとか⋯⋯永斗さんが無理を言いましたか?」
「⋯⋯ご想像におまかせいたします」
私は嘘がつけない性分だ。かと言って肯定したら、来美さんが気にするだろう。
しかし、賢い彼女は理解をしめしたようで、「ご迷惑かけしてすみません」と大きく息を吐く。
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