番外編① 島田くんは困っている

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もう、一ヶ月はこの過密スケジュールが続いている。 少し予定を詰め込み過ぎたかもしれない。 車窓を眺めたままの永斗さんは、きっと安定期に入ったばかりの真島さん――いや、くるみさんのことでも考えているんだろう。 だいたい彼の脳の八割はそれだ。いや九割八分⋯⋯だろうか。仕事にはことを欠かないが、私には丸見えだ。 「来美さんの具合はいかがですか?」 そう聞くと、碧い目が外の景色から移動して私を捉え、それからゆっくりと長い睫毛を伏せる。 「最近ようやくつわりが収まってきたと思ったのに、昨日はまた気分悪そうで⋯⋯できれば代わってあげたいよ」 悩ましげなため息。 彼のほうが、重症のようだな。 「お仕事の方は、まだお休みを?」 「休ませてるに決まってる。本人はだいぶ良くなったから行きたいと言ってるが、もしものことがあったら大変だ」 どちらの言うこともわからないでもないが⋯⋯ しかし、いまいち彼が言うと、症状の重さが伝わってこない。 何しろ⋯⋯過保護がすぎるからな。 「⋯⋯なに? 心配しすぎだとか言いたい?」 おっと、思考が読まれてたか。 「今回に関しては言いませんが、常に過保護だとは感じてます」 「⋯⋯島田は人を好きになったことがないから言えるんだよ」 「――――」 言いたい放題言って。 あなただってついこの前まで愛の“あ”すら知らなかったくせに ⋯⋯という文句は勤務中なので飲み込む。 言ったところであの鼻につく笑い方をされるのがオチだ。 何しろこの男は幸せの絶頂だからな。 そこで車はタイミング良くレストランに到着し、懇願先との昼食は、いつものように和やかにスタートした。
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