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プロローグ ユイカ、ユキと出会う。 01
それは、早春のいつもより早い桜の花が、満開の時だった……。
俺は、一人の女のコに出会った。
漆黒というより、青藍色の絹糸みたいな髪の毛が、一本一本光に当たると映えて、互いに重なり合うと複雑で不思議な色調を作り出していた。
その髪は、長く風に吹かれると軽く流れて、校庭一面に咲く桜のピンク一色に映えて、とても美しい芸術的作品に見えた。
その黒く藍色にも見える長い髪と、猫の目みたいに黒色の中に、トパーズ色の光が瞬く瞳。スリムなスタイルに、中学生らしい爽やかなセーラー服のその姿。
あの時俺は、確かに彼女に惹かれたんだ───────。
そこにあのコはいた。
地味なセーラー服を着ていたのに、一見普通の女のコと違う個性を放っていた。オーラを放っていたとも言えた。
初めて見る顔。制服も俺が通っている中学校のそれとも違う。
あ、いけね。
ここの高校の合格発表を見ないと、俺は安心出来なかったからだった。受かってないと俺は高校浪人になってしまう。
他の試験は全て落ちてしまった。もう俺はこの滑り止めで受けた、この僻地のこの高校の、合格に賭けるしか無かった。
さて、受験票はと……、番号は、あれ⁉︎
無い。無い‼︎
内ポケットに受験票を入れておいた筈なのに……、無い‼︎
やべえ、しまった。
この制服、受験の時着ていったのと違う。試験が終わってそのまま俺は、クリーニングに出してしまったんだった。
こんな高校なんか滑り止めでしか用は無い。さっさとこの着古したこの制服なんか、クリーニングに出してしまおう。
それでさっさとオサラバだ。
……他に受験番号が分かるものって。鞄の中を見る。
無い! 無い! 無い!
見つからない。
ああ、ここまで来て、やっちまったぁ……。
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