プロローグ ユイカ、ユキと出会う。 01

1/1
前へ
/218ページ
次へ

プロローグ ユイカ、ユキと出会う。 01

 それは、早春のいつもより早い桜の花が、満開の時だった……。  俺は、一人の女のコに出会った。  漆黒というより、青藍色(インディゴ・ブルー)の絹糸みたいな髪の毛が、一本一本光に当たると映えて、互いに重なり合うと複雑で不思議な色調を作り出していた。  その髪は、長く風に吹かれると軽く流れて、校庭一面に咲く桜のピンク一色に映えて、とても美しい芸術的作品に見えた。  その黒く藍色にも見える長い髪と、猫の目みたいに黒色の中に、トパーズ色の光が瞬く瞳。スリムなスタイルに、中学生らしい爽やかなセーラー服のその姿。  あの時俺は、確かに彼女に惹かれたんだ───────。    そこにあのコはいた。  地味なセーラー服を着ていたのに、一見普通の女のコと違う個性を放っていた。オーラを放っていたとも言えた。  初めて見る顔。制服も俺が通っている中学校のそれとも違う。  あ、いけね。  ここの高校の合格発表を見ないと、俺は安心出来なかったからだった。受かってないと俺は高校浪人になってしまう。  他の試験は全て落ちてしまった。もう俺はこの滑り止めで受けた、この僻地のこの高校の、合格に賭けるしか無かった。  さて、受験票はと……、番号は、あれ⁉︎  無い。無い‼︎  内ポケットに受験票を入れておいた筈なのに……、無い‼︎  やべえ、しまった。  この制服、受験の時着ていったのと違う。試験が終わってそのまま俺は、クリーニングに出してしまったんだった。  こんな高校なんか滑り止めでしか用は無い。さっさとこの着古したこの制服なんか、クリーニングに出してしまおう。  それでさっさとオサラバだ。 ……他に受験番号が分かるものって。鞄の中を見る。  無い! 無い! 無い!  見つからない。  ああ、ここまで来て、やっちまったぁ……。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加