70人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ ユイカ、ユキと出会う。 05
俺と彼女は、互いの手は離さずに、自分の脚を踏ん張っていた。でも手を離してしまうと、それぞれ勢いで反対方向に倒れてしまうだろう。だからその手は離すわけにはいかない。
クンッ! ピンと張った互いに繋いだその手の先には、互いに見つめている瞳があった。
俺は目を見張った。
このコの瞳に煌めく、トパーズ色の光。
この学校に来たら何かがある。
この少女と一緒にいたら何かがある。
君もおいでよ。
俺を呼んでる。
互いによろける事なく、俺は我に返った。
「ご、ごめん」
そう言って、俺は彼女と繋いだその手を離した。余程強く握ってしまったのか、手を離す時に自分の手を開けるのに、わざわざもう一つの俺の手で開けないと駄目だった。
俺と彼女に、それぞれ手の跡が残っていた。
「────びっくりしたぁ。あなた手が強いのね」
「そっちこそ。手が痛かった」
俺は自分の手を見て言った。彼女の細い手の跡が残っていた。
このコ、何かスポーツでもやっているんだろうか?
彼女のスラリとしたその細い身体は、筋肉で出来た芯でも入っているかのようだった。でも彼女の姿は、全体的に見れば筋肉質でも無い。
可愛い女のコのスタイルとして、バランスが取れているとでもいうのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!