プロローグ

1/1
前へ
/18ページ
次へ

プロローグ

 青年が後ろ手に拘束され、ひざまずいている。  それを大勢の兵士たちが銃を構え、取り囲んでいた。 「テオドール、お前が殺せ」 「はっ」  一人の兵士が呼ばれ、銃口を青年に向ける。  だが兵士は引き金を引かなかった。  わずかだが、手が震えているように見える。 「帝国の兵士は、動けない人間すら殺せないのかよ! できないなら、他の奴らに助けてもらったらどうだ!」  青年が吠えた。  その目に死の恐怖はなく、熱い思いがほとばしっていた。  兵士がじゃっかん口元を緩めたように見えた。 「陛下に逆らう愚か者は皆殺しにしてやる! 一人残らずな!」 「ああ、殺せ! 貴様らのような悪魔は神が許そうとも、アダン市民が許しはしない! 先に地獄で待ってるぞ!」  引き金が引かれ、銃声が響き渡った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加