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プロローグ
青年が後ろ手に拘束され、ひざまずいている。
それを大勢の兵士たちが銃を構え、取り囲んでいた。
「テオドール、お前が殺せ」
「はっ」
一人の兵士が呼ばれ、銃口を青年に向ける。
だが兵士は引き金を引かなかった。
わずかだが、手が震えているように見える。
「帝国の兵士は、動けない人間すら殺せないのかよ! できないなら、他の奴らに助けてもらったらどうだ!」
青年が吠えた。
その目に死の恐怖はなく、熱い思いがほとばしっていた。
兵士がじゃっかん口元を緩めたように見えた。
「陛下に逆らう愚か者は皆殺しにしてやる! 一人残らずな!」
「ああ、殺せ! 貴様らのような悪魔は神が許そうとも、アダン市民が許しはしない! 先に地獄で待ってるぞ!」
引き金が引かれ、銃声が響き渡った。
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