11人が本棚に入れています
本棚に追加
「う…ううっ……」
セシルは目を覚ました。
コート上にいたはずだったが、爆風で飛ばされ、端の壁に叩きつけられていた。
全身がきしむように痛い。
破片が当たったのか、体中から出血している。幸い大きなケガはなかった。
「なんだこれは……」
現世にも地獄というものがあるなら、ここを地獄というのだろう。
観客席の一部は跡形もなく吹き飛び、ぽっかりと大穴が空いている。
人々はあちらこちらに倒れ、とても生きているとは思えない状態で折り重なっていた。
セシルは、自分がこの程度のケガで済んだのが奇跡に思えた。
「ロワゼ……? ロワゼ!!」
すぐ近くにいたはずのロワゼの姿がなかった。
「父さん、母さん! マリー!!」
瓦礫と死傷者の山となった競技場を、セシルは家族と友人を求めて探し回った。
「ロワゼ!」
壁際に座り込むロワゼの姿を見つけた。
ロワゼの母を抱え込むようにしている。
「ロワゼ、おばさんは……?」
「大丈夫。大きなケガはない」
服はボロボロになり出血もあったが、意識を失っていたが、命に別状はないようだった。
ロワゼもそれほど大きなケガは見当たらない。
「マリーたちを見なかったか?」
ロワゼは目を伏せて、首を横に振った。
セシルの両親やマリーが座っていた場所は、爆弾で吹き飛んで大きな穴になっていた。
そこからは、首都が攻撃されている様子が見える。攻撃機から爆弾が次々に投下され、あちこちで爆発が起きている。
共和国軍も対空砲を撃ち、迎撃機を上げているが、攻撃機の数があまりにも多く防ぎ切れていない状況だった。
考えないといけないことがいっぱい過ぎて、セシルはこの事態をどう捉えていいのか分からなかった。
しばらくして呼吸を忘れていたことに気づき、深呼吸をする。
「助かるはずないよな……」
セシルの両親、そしてマリーは爆弾で跡形もなく、この世から旅立ってしまったのだろう。
感情のないセシルのつぶやきに、ロワゼは答えなかった。
自身の母だけが助かってしまったという、申し訳なさがあり、答えられなかったのだ。
ロワゼはしばらくしてから、突然、立ち上がって言った。
「セシル、復讐するにはどうすればいい?」
最初のコメントを投稿しよう!