開戦

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「う…ううっ……」  セシルは目を覚ました。  コート上にいたはずだったが、爆風で飛ばされ、端の壁に叩きつけられていた。  全身がきしむように痛い。  破片が当たったのか、体中から出血している。幸い大きなケガはなかった。 「なんだこれは……」  現世にも地獄というものがあるなら、ここを地獄というのだろう。  観客席の一部は跡形もなく吹き飛び、ぽっかりと大穴が空いている。  人々はあちらこちらに倒れ、とても生きているとは思えない状態で折り重なっていた。  セシルは、自分がこの程度のケガで済んだのが奇跡に思えた。 「ロワゼ……? ロワゼ!!」  すぐ近くにいたはずのロワゼの姿がなかった。 「父さん、母さん! マリー!!」  瓦礫と死傷者の山となった競技場を、セシルは家族と友人を求めて探し回った。 「ロワゼ!」  壁際に座り込むロワゼの姿を見つけた。  ロワゼの母を抱え込むようにしている。 「ロワゼ、おばさんは……?」 「大丈夫。大きなケガはない」  服はボロボロになり出血もあったが、意識を失っていたが、命に別状はないようだった。  ロワゼもそれほど大きなケガは見当たらない。 「マリーたちを見なかったか?」  ロワゼは目を伏せて、首を横に振った。  セシルの両親やマリーが座っていた場所は、爆弾で吹き飛んで大きな穴になっていた。  そこからは、首都が攻撃されている様子が見える。攻撃機から爆弾が次々に投下され、あちこちで爆発が起きている。  共和国軍も対空砲を撃ち、迎撃機を上げているが、攻撃機の数があまりにも多く防ぎ切れていない状況だった。  考えないといけないことがいっぱい過ぎて、セシルはこの事態をどう捉えていいのか分からなかった。  しばらくして呼吸を忘れていたことに気づき、深呼吸をする。 「助かるはずないよな……」  セシルの両親、そしてマリーは爆弾で跡形もなく、この世から旅立ってしまったのだろう。  感情のないセシルのつぶやきに、ロワゼは答えなかった。  自身の母だけが助かってしまったという、申し訳なさがあり、答えられなかったのだ。  ロワゼはしばらくしてから、突然、立ち上がって言った。 「セシル、復讐するにはどうすればいい?」
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