新緑の瞳

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* * *  昨日の客は、全くおかしな客だったなぁ。  おまえの作ったスープを、あんなに美味そうに食うやつなんて、はじめて見たぜ。あんな、水みたいなうっすいスープをよぉ。  おい、痛ぇよ、殴んなよ。  ……ああ、そうだよ。あの緑色の目をした客だ。あの客の話を聞いてたら、子どもの頃に聞いた話を思い出したぜ。  おまえも昔、夜寝る前、散々聞かされただろう?   緑の魔王の話だよ。  ……そうそう。何でも息を吹きかけるだけで、治しちまう力を持ってるっていう、森に棲む緑の目を持った王様の話さ。いろんな奴に力を利用されて、魔王を辞めたくなって森を捨てて逃げ出した、っていう。  ばーさんが何回も話してくれたなぁ。あの話って、結末どうなるんだったかなぁ。……おまえも覚えてねぇか。  それにしても、本当におかしな客だったなぁ。森がどうとか変なこと言ってたな。新しいとかなんとか……俺らが小さい頃には、もうあったじゃねぇか。一体どんだけ古い地図使ってんだよ。なぁ。  それに、あいつが言ってたレマンって村、どっかで聞いたことあるなぁって思ってたんだけどよ。俺のじいさんのじいさんが生まれた村だ。昔、聞いたことがある。  けどなぁ、もうだいぶ前、それこそじいさんのじいさんが子どもの頃に、その村の頭首の跡継ぎが病気で亡くなったとかで、そのまま廃れちまったらしい。村なんてもうとっくにないはずだぜ。  作り話だよなぁ? だって、どう見たって、あの客、二十代そこそこだったよなぁ。  ――まさか、な。
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