3人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
昨日の客は、全くおかしな客だったなぁ。
おまえの作ったスープを、あんなに美味そうに食うやつなんて、はじめて見たぜ。あんな、水みたいなうっすいスープをよぉ。
おい、痛ぇよ、殴んなよ。
……ああ、そうだよ。あの緑色の目をした客だ。あの客の話を聞いてたら、子どもの頃に聞いた話を思い出したぜ。
おまえも昔、夜寝る前、散々聞かされただろう?
緑の魔王の話だよ。
……そうそう。何でも息を吹きかけるだけで、治しちまう力を持ってるっていう、森に棲む緑の目を持った王様の話さ。いろんな奴に力を利用されて、魔王を辞めたくなって森を捨てて逃げ出した、っていう。
ばーさんが何回も話してくれたなぁ。あの話って、結末どうなるんだったかなぁ。……おまえも覚えてねぇか。
それにしても、本当におかしな客だったなぁ。森がどうとか変なこと言ってたな。新しいとかなんとか……俺らが小さい頃には、もうあったじゃねぇか。一体どんだけ古い地図使ってんだよ。なぁ。
それに、あいつが言ってたレマンって村、どっかで聞いたことあるなぁって思ってたんだけどよ。俺のじいさんのじいさんが生まれた村だ。昔、聞いたことがある。
けどなぁ、もうだいぶ前、それこそじいさんのじいさんが子どもの頃に、その村の頭首の跡継ぎが病気で亡くなったとかで、そのまま廃れちまったらしい。村なんてもうとっくにないはずだぜ。
作り話だよなぁ? だって、どう見たって、あの客、二十代そこそこだったよなぁ。
――まさか、な。
最初のコメントを投稿しよう!