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 畑に戻ると、足もとから、地響きのような声がとどろいた。 「ミミズにオシッコかけたら、どうなるか、知っているか」  オレは、こわれた人形みたいに、コクコク何度もうなずく。  ミミズキングの姿は見えない。  だけど、突き刺さるような視線を感じる。 「知っていて、やったのなら、よけい許せん」  地の底から湧き出てくるような、太い声。  思わず大事なところを両手でかくす。 「しかし……」  キングが言葉を切った。 「しかし……」の後にどんな罰が待っているのか。  考えただけで恐ろしい。 「……まあ、今回にかぎり、特別に許してやらないこともない」 「えっ!」  キングの声とは対照的に、オレの声は、頭のてっぺんから飛び出したような甲高いものになる。 「ただし……」  キングは続ける。 「た、ただし……?」  オレは、つばをのみこんだ。 「オレサマの願いをかなえることができれば、だ」 「へ?」  オレが、まぬけな返事をするより先に、ぐらりと地面が揺れた。  バランスを崩して、尻もちをつく。  その前に、サングラスをしたミミズが一匹顔を出した。  でかいっ! オレと同じ大きさっ!     って、あれ?   よく見るとオレが小さくなっていた。畑のイチゴがオレよりでかい。 「オレサマがミミズキングだ」  太い声で、すぐ近くまで迫ってくる。  ぬるりとした体に、ちょこんとのっかった真っ黒のサングラスが太陽の光を跳ね返して、チカリと光る。    こわっ。  思わず後ろに一歩下がる。 「コ、コウタです」 「……知っている」 「あ、あの、オシッコかけて、すみませんでした」  ジロリ。  本物の目はサングラスにかくれて見えないのに、にらまれた気がして、ちぢみあがる。 「オレサマの願いをかなえろ。そうすれば忘れてやる」 「願いって、なんですか」  そう聞いたとたん、キングの様子がおかしくなった。  顔をそむけたり、太くてヌメヌメした体をクネクネしたり。  ん? これって、もしかして、モジモジしてる?
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