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「この先で、ゆっくりされておられることが多いのだ」
キングが顔を向けたその先に、ぽっかりと空洞があった。
天井から、なんの作物がわからない根っこが、ふさふさとたれさがっている。
その下に、ポテっと丸い物体が転がっていた。
時々、もそもそと動く。巨大幼虫。あれは、カブトムシの幼虫?
いやじいちゃんの畑にいるのは、もっと小さい確かカナブンの幼虫。
「ああ、今日も、美しい」
……あれが、美しいんだ。
「ほ、ほら、早く、オレサマを紹介しろ」
キングが上ずった声でオレをせかす。
背中を押されて、一歩、二歩、と前に出てしまう。
「だあれ?」
幼虫が顔をあげた。
体に比べたらずいぶん小さい顔。
その中のもっと小さなつぶらな瞳がオレを見つめる。
「何か用?」
「あ、あの、えっと」
どう言っていいのかわからず、オレもキングみたいにクネクネしてしまう。
ええい、こうなったらストレートに言うしかない。
「カレシは募集していませんか?」
「え?」
つぶらな瞳がキラキラとオレを見る。
なんだかオレまでドキドキしてしまう。
「オレ、いや僕の、なんていうか知り合いというか、今日知り合ったばかりなんだけど、ミミズが……てか、キングが……」
背中にキングの視線を感じる。
違う意味でドキドキする。ちゃんと言わなくちゃ。
「あの、その、あなたにカノジョになってほしいそうです」
「カノジョってなあに」
くりっと首をかしげる。
たしかに、ちょっとかわいいかも。
でも、このかわいさって……。
「えっと、恋人ってことかな」
「わかんない」
「……そうだよねえ」
「コイビトって何? 食べられる?」
幼虫は無邪気に聞いてくる。
そうだよ。まだ幼虫。つまり子どもってことじゃん。
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