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「トモ、今日は一緒に寝よう。こっちにおいで」
ぼくたちは母さんを真ん中にして横になった。部屋の電気を消すと、廊下を挟んだ中央の部屋から、ほんの少しの明かりと人の声が漏れてくる。
暗くなった部屋の中で、ぼくは今夜のできごとを思い返した。わけのわからないことばかり、まるで冒険物語に迷い込んだみたいだ。最初に目が覚めてから1時間も経ってないなんて信じられない。
向こうの部屋では、また誰か合流したようだった。町内会の望月さんかな。ここは町内会の人たちの秘密基地なのかな。望月さんの奥さんは妊婦さんだった。いつ生まれるんだっけ。生まれるのは男の子だといいな。町内会は子どもが少なすぎるんだもの……
「……これを聞けよ! 本当にやりやがった!」
志田さんの声で、ぼくは閉じかけていた目を再び開いた。小さな悲鳴が上がる。何が起こったんだろう。みんな何を聞いているのだろう?
そのとき、周りからカタカタと小刻みな音が聞こえてきた。起き上がりかけて、ベッドが揺れていることに気がつく。
地震だ。
みんなの声が大きくなる。ニュース放送みたいな声も聞こえる。誰か女の人が「消して、消してちょうだい!」と叫んだ。
母さんが突然起き上がると、ベッドから飛び出してドアに駆け寄った。ストッパーを外してドアを閉める。部屋は真っ暗になり、音も聞こえなくなった。
「母さん?」
不安になって声をかけたぼくの元に母さんが戻って来た。ぼくとリナを抱きしめるようにして再び横になる。
リナがぐずり声を上げた。揺れはまだ続いている。ぼくの体に回された母さんの腕も震えている。
ぼくはさっき見た夢を思い出した。夜空を飛び回る大きな鳥、叫ぶ人たち、火……
「母さん、これからどうなるの?」
母さんはぼくたちをいっそう強く抱きしめた。
「わからない。明日になれば、たぶん……だから今は、ゆっくり休もうね……いい夢を見て……さあ、おやすみ……」
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