3・ミラクル発生!?

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 耳元に流れるのは無音。  予想していた音楽がまったく流れない。 「?」  不思議に思って、佐藤くんを視線を向けてみるが、何も言わない。  とりあえず、そのまま聴き続けると、ザッと砂が流れるような音が聞こえた。  次の瞬間。 『マネージャーさん。次は、どんな仕事ですか?』 『マネージャーさん。ありがとうございます』 『オーディションに落ちてばかりで、僕・・・情けないです・・・・』  え。なんだ、これ。 「はぁああああああ!!!!」  いきなり声をあげた私にビクつく佐藤くんが視界に映ったけども、それどころではない! 「やばい、キュンキュンする! へっ!? ど、どどどういうこと!?  これっボイマスの桜木 伸の声じゃん!  へ!? なんで、これ、イベント進めれば聞けるの!?  いや、て言うか、女子向けのゲームやってるってこと!?  それとも声オタってことなのっ!? えっ、ほんと、どういうことなのっ」  あまりの衝撃にノンブレスの質問が口から次から次へと飛び出していく。 「あ、そ、えと、そのっ・・・お、落ち着いて鈴木さん」  その困惑した声と引き気味の表情にハッとした。 「ごほん」  ヤダヤダ。私ったら、声オタとして感情が昂ぶり過ぎちゃった♪  今、目の前にいるのは、声オタを理解している愛美ではなくて、クラスメイトだぞ。  アニメで見るような聖女様をイメージして、心を落ち着かせる。  大きく、深呼吸をして、咳払いをして、荒ぶった声を整えた。 「それで、どういうことなのかしら? 佐藤くん」  口調が変わっているとか、その辺には触れないで欲しい。  何よりもイメージが大事なのである。 「そ、その、鈴木さんなら理解してもらえると思うんだけど……今から話すことは、絶対、絶対に、秘密にして欲しいんだ」  荒ぶった心のままの状態になった私を見たにも関わらず、意外にも佐藤くんは、今まであまり合わなかった視線がぶつかり合う。  それは決意の固さを感じた。 「わかった・・・約束するっ」  私の導き出した答えは”ゲームの関係者”  もしかしたら両親がゲーム会社で働いているのもしれない。  そして、教室で愛美と興奮気味に語っていたボイマスの話が耳に入って、親のために”リアルな感想&コメント”を聞こうとしている、健気な親子愛!  大丈夫よ。オタクたるもの情報管理は大事なこと、わかっているわ。  このことは口外はしないからっ!  ・・・あぁ、でも、絶対、情報は漏らさないけど、制作秘話とか聞かせて欲しいなぁ。    顔を出しそうな、(よこ)しな気持ちを、力の限り、抑え込んで口を閉じ、笑顔で答えを待った。
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