4・秘密のレッスン!?

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「うん、そう、キュンとさせる! じゃなくて・・・『デートに誘いたい!』っていうイメージがいいのかも!」  声のお芝居も大事だけど、お芝居することに夢中になりすぎて気持ちがないがしろになってしまってはいけない。女の子って意外と(さと)い生き物で、言葉の中に隠された気持ちに気づいてしまう。嘘か(まこと)か。 「・・・その発想はなかった、そっか。  俺、台詞に囚われて、ちゃんとお芝居しようしようって……キャラの気持ち、ないがしろにしてたんだ」  佐藤くんにアドバイスをしながら自分の女の子として乙女心に気付くこともできた。  そして、その声オタだけでない乙女心が、何やらお役に立てたことが嬉しい。  再び、台本に向かい、文字を追ってブツブツとつぶやく姿は声優さんだ。  頑張れ、佐藤くん。  集中しはじめた佐藤くんを邪魔しないように、心の中で応援の言葉をかける。 「あ、あの鈴木さん」 「どうしたの?」  それから数十分(すうじゅっぷん)後。何度か台詞を呟いていた佐藤くんが、顔をあげて、目線をゆらゆらとさまよわせながら聞いてきた質問が意外だった。 「あのさ、こういうことって、他の男子とか……」 「いやいや、まっさかー。彼氏とか、そもそもリアル男子に興味ないし。」  画面越しで抱きしめられた回数は数え切れないけど。  もしかしたら浮気とか、そういうの心配しているのかと思って、現実に興味がないことの念押しも込めて伝えると、佐藤くんは、あからさまにほっとした表情をした。   「そ、そっか」 「うん。あ、でも、私、弟がいて、嫌がらせで抱きついたりするの。それがさー」  弟が「高校生のクセに!」と嫌がるというか、恥ずかしがる様子が面白くて。  そう言いたかったのだけど。佐藤くんの暗い表情に、言葉を止めた。 「い、嫌がらせ……」 「あっそれは家族間で、別に佐藤くんに嫌がらせしたいとかじゃないからね!?」  まさか、ピンポイントでその言葉が気にしてしまうなんて。  あわてて、訂正したけれど、うまく伝わっていないような気がする。  そう言えば、愛美にも「誰彼(だれかれ)かまわずにホイホイ抱きつくのやめなさい!」と注意されていたような、気がする……こう言うことだったのね!? いまさら気付いても、時間を巻き戻せるなんてことはできない現実(りある)! 「あ、うん。そ、うだよね。わかってるよ。大丈夫」  眉を下げて、困ったように笑う佐藤くん。   とても気まずい雰囲気が流れたので、今後はもうちょっと考えてみようと、それなりに反省した。  伝えるって、ほんとむずかしい。
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