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5・トラブル発生!?
「『マネージャーさん、僕のこと、好きーーですか?』・・・どうかな?」
今日も今日とて、理科室に響く声。秘密のレッスンも佳境だ。
慣れないアドバイスも、それを理解しようとする佐藤くん、お互いに四苦八苦したかいあって、練習も順調。たぶん。
なんとか台本の後半、クライマックスのシーンにきた。
このセリフの”好き”は、LOVEと見せかけてのLIKEであるが、ユーザーである、マネージャーにはLOVEを想像させるのが胸キュンなポイントだと思う。
「悪くないと思うけど、なんか、もうワンパンチ足りないっていうか……」
「ワンパンチ……?」
「もう、ひとひねりっていうかー……ふわぁ〜あ」
耐え切れず欠伸が出てしまった。
慌てて口元を覆ったが、説明している途中にその行動は誤魔化せない。
さすがに練習に付き合っている目の前で、失礼すぎだ。
「ご、ごめん。佐藤くん。ボイマス自体、やっぱり楽しくて、つい睡眠削っちゃて……」
だって、ボイマスが楽しいからいけないんだ。
佐藤くんとの秘密のレッスンも自分にとって発見もあって楽しいけど、ゲームをプレイするとより感慨深く、そして、キャラを理解していくとレッスンに活かせることもあって、2倍で楽しいんだ。
そうは言っても、レッスン中にあくびだなんて、失礼極まりないことは分かるので、あれこれ正当な理由を考えては口出す前に消えてしまう。
さすがの佐藤くんも、嫌な顔一つぐらいしてしまうんじゃないかと心配だった。どきどきしながら、そっと様子を見る。
「いや、なんか、そんなに楽しんでくれてると……嬉しい」
でも佐藤くんは気を悪くした様子はなく、むしろ、微かに笑みを浮かべていた。
「そっ、そうかな」
今まで、ゲームをやりすぎるなーとか、注意されてきたことが多かったので、肯定されると、どう反応したら、いいのか分からなくなる。それに佐藤くんの優しい笑顔が貴重すぎて、まぶしい。
「もうちょっと、考えてみるよ。まだ帰る時間まで、まだ1時間ぐらいあるし、ちょっと寝る?」
私の戸惑いを感じたのか、それとも本当に一人で考える時間が欲しかったのかはわからないけれど、佐藤くんの提案に甘えることにした。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
私はその場に腕枕をして仮眠をとる体勢に入る。
視界が暗くなると、すぐに眠気が襲ってきた。
「うん。おやすみ」
眠りの世界にいく直前、優しい声が鼓膜にふわりと触れられ、心地よい眠りへと私は落ちていった。
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