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1・声優オタクの日常!?
ざわつきが落ち着かない朝の教室。
早々に机の上に筆記用具を準備し、黒板の隣にかけられた時計の針を確認する。
授業開始まで時間はまだある。
急いでバックからスマホを取り出し、イヤホンを差し込む。
アプリを起動すると、ウィリアムが顔を出した。画面下に表示された<ウィリアムの言葉>をタップすると、ウィリアムが耳元で囁く。
『ふふっ。イケナイ子ですね、姫様は。今は勉強の時間ですよ……と言いたいところですが、今日は天気が良いですからね。……特別ですよ?』
はぁ! 吐息が近いっっっんん!
「はぁ〜……ウィリアム。いいえ、諏訪さまの美声、ほんっとにサイコー!!」
さすがだわ。オトメートル……大手乙女ゲーム会社ということにあぐらをかくこともなく、ゲームアプリだというのに。ダミヘと言われる立体的に音声収録ができる、超高価で収録が大変と言われている”ダミーヘッドマイク”を使用してボイスを収録してくれている……さすがです、さすがすぎです。最高です。心が震えております。
「のぞみは、本当に好きよねぇ。諏訪さま」
心の中で、エンドレスに神(オトメートル)に感謝を捧げながらも、高まるテンションを抑えきれずに震えている私に呆れたように声をかけてくれたのが、幼馴染の福島 愛美。
そして諏訪さまって言うのが、このモーニングコールならぬ、モーニングボイスをしてくれるウィルアムの声を担当している声優さんのお名前、諏訪 潤さま。
諏訪 潤さまは、圧倒的な人気を誇る男性声優NO.1と言っても過言ではないほどの素敵ボイスなのである。
こんな風にやたらとアニメやゲームではなく、声優事情に詳しい私は”声優オタク”と言われる通称”声オタ”と呼ばれるオタクだ。ひと昔前のオタクは隠さないとバカにされてしまう……なんて時代を生きていた親からすると「ありえない」なんて言われるぐらい、ここ最近のオタクは市民権を得ている。数々の芸能人の公言して、アニメが社会化現象を起こして、10億円なんて数字を打ち出したりして、声優の活躍をアニメを知らない人も認知するようになったからだ。
おかげで、こんな風にゲームにテンションを高くしたり、声を漏らしたりしても、親が言うような状況になったことはない。
ありがとう!平成! ありがとう!令和!
そんな今をときめく乙女の私は、絶賛、諏訪さまに夢中!
友人……と言うか、愛美には「口を開かずに大人しくしていれば彼氏ができそうなのに」なんて言われるけど、私はリアルな人間、そう3次元に興味はないからいいの!
声優は3次元でしょ?って言われるけど、私から言わせると違う。
現実だけど、現実じゃない。神様みたいなもので、存在が尊い。決して、触れることのできない存在だからこそ、冷静に、そして、情熱的に想いを伝えることができる。
まぁ、そりゃー夏祭りとか? クリスマスとか? イベント毎になると……ちょっとは「3次元がいた方がいいのかなぁ?」なんて思うことがないとは言わないけれど、でも、でも、やっぱり、素敵ボイスの誘惑にはまだまだ勝てそうにはないし、今が幸せなので気にしていません!
この愛が尽きるまで、注ぎましょう!
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