7・最後の仕上げ!?

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 私は気になっていたことを実行することにした。 「えっ?」  戸惑う佐藤くんの声には気づかないフリをして、手を伸ばす。  だって、このプロフィール写真、佐藤くんの良さが最大限に出ていない!  声優とはいえ、プロフィール写真はオーディションなどでも重要項目だ。もちろん、どんな声なのか?は最大に重要だけど、次に、ビジュアル。写真からキャラクター性が見えるのがベストなのだ。優等生なのか、元気なのか、明るいのか、大人しいのか、そういった人柄も大事だ。  声オタとして、数々の声優事務所のホームページを渡り歩き、チェックしてきた私として「ここで(ちから)を発揮しなくて、どこでする!?」なんて謎の使命感と共に、正面にとらえた佐藤くんのまず前髪に触れる。 「あ、えっす、鈴木?」  佐藤くんと話すようになって、イケメンではないけど、顔は悪くないと思っていた。  平凡顔代表のお前がどの目線なんだって言われそうだけど「私が佐藤くんのマネージャーだったら、あーして、こーして……」という勝手に脳内プロデュースがはじめてしまうのも声オタゆえからかもしれない。 「えっ」  そうして、脳内でイメージしていたプロデュースを実行した。  佐藤くんの髪を流したり、ちょっとしたヘアスタイリングもする。すこし硬いけど柔らかい髪は触ってて心地が良い。  最後にメガネを外して・・・よし。 「うん、いい感じ! きゃーイケメン! なんてお世辞は言わなけど、私は佐藤くんの顔、結構好きだよ!  だから、自信持ちなよ!」  重めの前髪を横に流して、視界は良好になった! はず。  だけど、メガネを外しちゃったから実際のところ視界不良かもだけど。  でも、困惑した目線で、こちらを伺う姿は・・・まるで、子犬!  うんうん、いいねいいね。ワンコ系でいけるな。うん。 「あ、ありがとう?」  おずおずと目線を合わせてからの、はにかんだ笑顔をいただきました。  佐藤くんのフルフェイスのスマイルなんて、超レアだよね!  いいもん見たわ。眼福(がんふく)。眼福。 「あーでも、こんな佐藤くん知ったら、一気に人気者になっちゃうかも  そうしたら、嬉しいけど、なんだが知って欲しくないような・・・ファン?失格よね」  声オタである私がキチンと応援しなくてはいけないのに、寂しくなっちゃうなんて、ダメだな。  自己反省の意味も込めて気持ちがつい、こぼれてしまった。
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