8・秘密のヒミツ!?

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「さ、佐藤くんは食べないの?」  その熱を散らすように、メニューをテーブルの上に大きく広げる。 「ううん、俺はいいよ。このあと、久しぶりに写真でも撮ろうかと思って、歩く予定なんだ」  そう言って、カバンから出してきたのは想像していたカメラより小さい。  カメラというと、双眼鏡みたいな長いレンズがくっついている、とにかく大きいイメージがあった。 「? 意外と小さいのね。どんな写真撮ってるの?」 「風景ばっかりだよ」 「え、もし、よければ見せてほしいな」  なんの知識もない、初心者丸出しの私のお願いを佐藤くんは嫌な顔ひとつせずに、その小さなカメラを手渡してくれた。  思ったより重いかも?  私の手のひらに収まるカメラだ。 「カメラ、小さいんだね? もっと大きいと思ってた」  素朴な疑問が頭の中で収まらずに、口からこぼれていた。  佐藤くんは小さく笑って、説明をしてくれた。 「これは一眼(いちがん)とかじゃなくて、コンデジなんだ」 「コンデジ?」  佐藤くんの口にした言葉が理解でしず、勝手に体が動いて、首をかしげていた。 「コンパクトデジタルカメラの略。一眼は趣味にしてはちょっと高くて、買うのも扱うのもちょっと難しくて……あ、でも、一応、このコンデジは、(しぼ)りとかシャッタースピードどか操作できるんだ」 「しぼり?スピード???」  より専門用語っぽい言葉に、理解がついていけない私はただオウムのように言葉を繰り返す。  そのことに気づいた佐藤くんは、一度、言葉を区切った。 「えっと、簡単にいうと、一眼。鈴木さんがいう大きいしっかりしたカメラが一眼って言われるものなんだけど、これはデジタルカメラって言われる一般的に気軽に持ち歩けるようになったコンパクトなのが特徴なんだ。  一眼っていうのはレンズを交換しながら、撮影条件によって、細かな設定操作ができて、その中で主な設定が、さっき言った”絞り”や”シャッタースピード”って言われるものなんだよ。  逆に、コンデジはそう言った操作ができないのが一般的なんだけど、これは、一眼に近い細かい操作をすることができるタイプってこと」  佐藤くんは、本当に、夢中になると、言葉の波がすごい。いつも心の内に仕舞い込んでいたものが一気に流れ出す。  写真撮影、カメラが好きという熱量が伝わる言葉量に驚きながらも、クラスメイトでこの佐藤くんを知っているのはいないんだろうな、なんて思ってしまう。 「そうなんだね」  噛み砕いて説明をしてくれているのはわかったけど、やはり、カメラのレンズの違いさえわからない私からすればクエッションマークの乱舞である。佐藤くんがせっかく説明してくれたのに理解できないことに申し訳なさがありつつも、自分なりに噛み砕いて、説明をしてもらった言葉を飲み込む。 「あ、ごめん。すごい語ってしまって」 「ううん。こちらこそ、機械とか苦手で理解が遅くて……」 「こっちこそ……あの、もし、だけど、興味出た時にでも聞いてくれれば何度でも答えるから……」  佐藤くんが、本当に優しくて、びっくりしてしまう。 「うん。ありがとう」  とりあえず、今、保存されているデータを見る操作方法を教えてもらい、次へ次へと写真をみる。
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