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「いろんな写真撮ってるねー」
佐藤くんの言っていた通り、保存されていた写真は、風景がほとんどだったけど、多数の人が交じ会う日常であったり、思うがまま自由に撮っているのがわかった。
そして、もちろん、写真同好会に入って活動しているから学校内の風景もあるわけだけど・・・
「あ、これはグラウンドだね! って、あれ? わたし??」
カメラのボディについている小さな液晶画面に映されたのは、机の上で腕を組んで寝ている私の姿。
「あっ! その、それはっ」
私はピンときた。こんな私の姿を撮ることができたのは、放課後のあの日しかない。
目線をスッと動かせば、しまった、と顔をした佐藤くん。
そんな顔もレアだけど、ここはひとつしっかりせねばならない。
「これはちょっと、ないんじゃない!?」
我ながらびっくりするぐらいの棒読みセリフ。やはり声優さんの声をたくさん聴いているからといって、感じることができても、再現することはできない。
「ご、ごめん!!」
そんな棒読みセリフにも気付く余裕もないらしい佐藤くんは深く頭を下げて、謝罪してくれた。
ほかの男子だったら、ドン引きどころか、氷漬けなところだけど……佐藤くんにはそんな行動をしようとは1ミリも思わなかった。
「・・・なんてね」
私が怒ったパフォーマンスをしていたことに気づいていなかった佐藤くんは、私の言葉に驚いたようだった。
「え?」
その表情があまりにも呆然としているのでクスクスと声が漏れてしまう。
イラズラ成功ってこと!
え? 意地悪なんかじゃないからね。
乙女の寝顔を撮るなんて、由々しき事態!
でも。
「怒ると思った? なんか、こんな自分じゃない、作品みたいに綺麗に撮ってくれてて。もー……怒る気にもなれないよ」
そう、自分でも自分じゃないみたい。
絵画のような写真だった。
不細工な姿だったら、こんな風に笑えないし、グーでパンチをしてたかもしれない。
だけど、自分でも、素敵な写真になることに……少なからず感動をしてしまった。
「っ・・・」
「あ、他人には見せないでね。恥ずかしいから。まーでも。何かのコンテストに出したいっていうなら、それはモデルの許可をとって下さいね」
ちょっと恥ずかしいけど、コンテストに出るなら考えようじゃないか。
なんて、上から目線だけどもおどけながら言葉を口にした。
「そんなこと、しないとおもうけど・・・」
控えめな辞退。
ちょっぴり残念なような、そうじゃないような。
「もー。もし、よ、もーし」
本当に真面目だなぁ。と、吐息に混ぜながら、そんな佐藤くんは良い人で、好きだなぁーと改めて思った。
肩をすくめて、大きく息を吐き出す。
「あ、あのさ。これからも相談させてもらっても良いかな?」
それに、これからも佐藤くんとの秘密のレッスンは続きそう。
もちろん、そのことも嬉しいんだけど、佐藤くんとこうして喋れることの方がもっと嬉しかったりもする。
「もちろん! これからもよろしくねっ」
ただ、今はまだ、佐藤くんには秘密にしておこうと思う。
ーーーーsee you next time?
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