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「あ、う、うん?」
あれ、引いてる? 佐藤くん??
ボイマスの話を聞いた当初のことを思い出す、デジャブ感。
ならば、このままデジャブってもらいましょう!!
オタクの妄想力をなめないでください。
妄想力は無限大! 好きなことならば底なし沼!!
一度、ハマったら抜け出すことは不可能!! なんですっ!!
「あのねあのね、見た目も去ることながら、あの子、すっごいお姉さん口調なの!
きっと、あぁ見えて、実は、あの男子より年上と推測できるわ。
はぁ……なんと言う、ギャップ萌え!
その上、アニメ声とはまた違う、トロッとした感じの甘い声っ!!
くぅ〜!! これは、なかなか稀にみる……レア・ボイスよ!
これが地声って反則じゃない!?
……はぁ、ホント生きてて良かった!!!!」
ほぼノンブレスの語りに、佐藤くんは出会った頃より慣れたようで、唐突な興奮アタックという前フリがあれば心の準備ができているのかもしれない。
「本当に鈴木さんは、声が好きなんだね」
困ったように眉を垂れさせながらも笑ってくれた。
「うん!」
だからこそ、私も思いっきり、語れるのだ。
素晴らしき仲間。
「あっ! そう言えば、佐藤くん自身は好きな声とか、声優さんとかっているの?」
私ばかり語っていて、佐藤くんのことは知らないことが多い。
むくむくと私の声オタ探究心が芽を出す。
「え、あ、え?」
「ちなみに男性声優さんは、今回は除外ですっ」
それに今までリアルな友達で声優話ができる人がいなかったため、第三者の好みが気になる。そう、そんな年頃でもある。
「だ、男性ダメって……じょ、女性ってこと!?」
「YES!」
私のダメ押しの言葉に、佐藤くんは眉を下げて、困り顔になってしまった。
その表情に「男性でもいいよ」と言いたくなったけど、ごくりと飲み込んだ。
ほんと、意地悪ではあるけれど、気になってしまったのだから仕方がないよね?
「えっと、うんと、女性声優と言えば、林原 茜さん、かなぁ……」
時間をかけて悩み困りながらもちゃんと答えてくれる佐藤くんは本当にいい人だ。
そして、語尾が小さくしぼみなりながら答えてくれた名前には、素直に納得ができなかった。
「うむむっ」
・・・そうきたか。
林原 茜さんと言えば、レジェンド声優と言われる、元祖アイドル声優の先駆け的な存在で、ただ美しいだけでなく、圧倒的な実力をも持つ女性声優さん。
誰もが認める実力なので、好みとはまた違うような気がしないわけでもない。
もちろん、ここで諦める私ではないっ!
「ねぇねぇ。同世代の子ではいないの? 人の好きとか尊敬できるとかじゃなくて、ホントのホントに好みの声だからね!」
秘技、できる限りの最高の笑顔だ!
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