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「ええっと、同世代の子は・・・いないかな」
佐藤くんは眉を下げ、苦笑しながら答えてくれた。
なんだか、はぐらかされたような感じがする。
ゲームだったらヒロインの子の笑顔でときめいてくれて、教えてくれたりするんだけど……はぁ、現実も、ゲームみたいに分かりやすく親密メータとか分かればいいのに。
なんて思ったところで、そもそも私はヒロインってキャラでもないし、ただの友達、戦友?みたいなもんだし・・・佐藤くんに効果はないようだ。
そんな不満気な空気が出ていたからか、どうかは分からないけれど。
佐藤くんは目線を落として、彷徨わせたあとにポツリと声をこぼした。
「……その、俺は鈴木さんの声とか、す、きな声、か、な」
それは、聞き逃しそうになる程、小さい声で、しかも、言われた言葉が、強烈過ぎて、一瞬、理解できない。
「・・・」
「・・・」
時が止まる。
あんなに賑やかだったカフェにいるはずなのに、音が聞こえなくなった。
どれくらいの時間が経ったのか、氷が溶けていくようにじわじわと理解した瞬間、言葉が駆け足で出ていく。
「あ、ありがとう! わわ私も、佐藤くんの声、好きだからっ!」
「あぁぁぁ、ありがとう!!」
お互いが、お互いの褒め殺しに瀕死状態。
涼しいはずの店内も、暑く感じてしまうぐらい体温が上昇した。
テーブルの上にある氷の入ったコップに手を伸ばして、勢いよく口をつけた。
「フゥー……」
もー。佐藤くんって、無自覚イケメンなところがあるんだよね。
心の準備も何もない状態だから、心臓がバクバクして痛い。
ん? あ! そうか、こういうところも、うまく仕事に活かせたら、佐藤くんが売れっ子に近づける気がする!
「うん! イケるよ! 佐藤くん!!」
「え、あ、うん?」
これからの推しごとに活かせそうなことに気付いて、考えを巡らせる私は、何かに気づいていないとか、なんだとか。
そのことに気づくのはいつになるのやら。
この時の私には全く想像も、気づきもしなかった、あるカフェでのお話。
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