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ノンストップのオタク語り。
私の呼吸のごとく、止まることのない解説に愛美を苦笑しつつも称えてくれる。
「……どんな状況でも声オタ健在!って感じよね」
「それほどでもないよー!! まだまだ、私なんてオタク界でも下の方だよー」
私の謙遜を聞いた愛美は、なんとも言えない顔をしていた。
オタクレベルとしては、まだまだライトな方なんだけど。
「って、ん? 佐藤、祐希? うちのクラスの??」
首を傾げながらつぶやく愛美にすぐさま訂正を入れる。
「むぅっ。ゆうき、じゃなくて、ユキだってば!」
認知は新人さんにとって重要で、大事なことなので、きちんとした情報が伝わらなくてはいけない。
とくに、鈴木、佐藤などのたくさんある名字だったり、他に似た名前がある場合など、とくに注意が必要だ。
「あぁ、ごめんごめん。ほぼ同音だから」
「あ、でも、たしかに? 言われてみれば??」
愛美に言われて、ぼんやりと佐藤くんの顔を思い浮かべる。
しかし、どんな声だったか、キャラだったのか、いまいち印象がなくて、首を傾げた。
「のぞみってば。本当にリアルに興味薄いんだから。まーでも、芸能人だけじゃなくても一般的にも同姓同名ってあるぐらいだから、そんなに珍しくなのかもね」
そんな私の様子に愛美がため息交じりにフォローしてくれたけど、実際のところ、クラスメイトのフルネームなんて覚えていない……。
別に興味がないとかじゃなくて、ただ、他に覚える情報があるっていうか、なんというか……いや、これが興味が薄いってことになる?
まぁ、でも、なんか名前が引っかると思ってたけど、そういうことか。
やるじゃん。私の脳みそ。
本人の意識関係なく、なんとなく覚えていて偉いぞ。うんうん。
「なんか……スッキリしたー……」
昨夜からなんとなーく引っかかっていた謎が解明されて、モヤモヤがスッキリした私は、瞼を開け続ける努力をやめた。
「のぞみ? え? ちょ、もうすぐ授業はじまるってっ!!」
愛美の驚く声も、ユサユサと揺れる体も、今の私にはゆりかごで聞く子守唄にしかならない。
遠くで聞こえるざわつきも心地良く、眠りを導いてくれる。
そんな私を見ている人がいるとは気づきもせずに。
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