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 放課後の教室。  開けた窓から吹奏楽部の音が微かに聴こえてくる。  私、水嶋(みずしま)(ゆず)は今、クラスメイトの平原(ひらはら)(いつき)くん数学を教えてもらっている。 「この問題は、ええっと……?」 「これはこの公式を使うんだよ」 「あ! なるほど」  私はノートに公式を書いた。 「……水嶋さんって、えらいよね」 「え?」  思わず顔を上げたら、優しく笑う彼と目が合った。 「苦手な教科を頑張るところ」 「……そお? えへへ」  私は照れるのを笑ってごまかした。  私は中学の頃から数学が苦手だった。  それは高校2年になった今でも変わらなくて。  そこで苦手を克服すべく、数学が得意な平原くんにダメ元でお願いしてみたのだ。 『平原くん! 私に数学教えてください!』 『え? うん。いいよ』  なんと、彼はあっさりOKしてくれた。
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