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ー 1 ー
放課後の教室。
開けた窓から吹奏楽部の音が微かに聴こえてくる。
私、水嶋柚は今、クラスメイトの平原樹くん数学を教えてもらっている。
「この問題は、ええっと……?」
「これはこの公式を使うんだよ」
「あ! なるほど」
私はノートに公式を書いた。
「……水嶋さんって、えらいよね」
「え?」
思わず顔を上げたら、優しく笑う彼と目が合った。
「苦手な教科を頑張るところ」
「……そお? えへへ」
私は照れるのを笑ってごまかした。
私は中学の頃から数学が苦手だった。
それは高校2年になった今でも変わらなくて。
そこで苦手を克服すべく、数学が得意な平原くんにダメ元でお願いしてみたのだ。
『平原くん! 私に数学教えてください!』
『え? うん。いいよ』
なんと、彼はあっさりOKしてくれた。
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