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慶太さんが、はあー、と大きく溜息をついた。
「……柚。俺、行くから」
呟くように言った後、慶太さんは私の体をぐいっと離して、背を向けてドアから出ていった。
バタン! とドアが冷たく閉まる。
(……え?)
慶太さんに、溜息つかれた。
私はその場にぺたんと座り込んだ。目から涙が溢れる。
「……冷た……」
慶太さんって、こんなに冷たい人だったの?
それとも私に呆れちゃった?
(男の人って皆、『彼女』っていう存在を放っておくものなの?)
それとも、私が好きになった人が偶然そうだっただけ?
(釣った方の彼女の方に、ちゃんと餌をあげてよ……ばか)
涙が止まらない。
拭いても拭いても、溢れてくる。
辛くて、ここにいたくない。
(……帰ろう)
私は深呼吸を何回かして、無理矢理涙を止めようとした。
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