犬は穴掘りが好き あるいは、残酷な王女の物語

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〜ややブラックですが、犬は無傷です〜 1 「おばあちゃん?犬を飼うとオキシトシンが分泌されるんだって」  ソファーに寝転んでスマホをいじりながら、ダニエルが言った。 「なんだね、それは?」  ロッキングチェアーでレースを編みながら、祖母が尋ねた。 「幸せな時に出るホルモンだよ」 「それなら、ホットチョコレートを飲みながらマンガを読んでも同じだろう?」  ダニエルは続けた。 「犬の訓練は飼い主にとっても適度な運動であり、アドレナリンの分泌を促すんだって」 「それなら、歌いながらトランポリンで飛び跳ねても同じだろう?」 「そんなことしたら舌を噛んじゃうよ!」  ダニエルは起き上がって言った。 「おばあちゃん、みんな犬を飼ってるんだ。ローラにホラン、トラウデンだって」 「トラウデン?」 「トラウデンはウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼ってるんだ!」 「おまえのガールフレンドはややこしいのが多いね。トリンドルちゃんはどうしたんだい?」  ダニエルは頬を赤らめて、返事はしなかった。 「犬を飼うってのは、最後まで重い責任を負うことになるんだよ」  祖母は編みかけのレースを膝に置くと、ゆっくりと話しはじめた。
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