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付き合って一年。これまで予兆はあった。最近会えなくなってたし、康弘からの連絡も減っていた。極め付けは、彼の誕生日に仕事が入ったと言われた時。何故かわからないけど、終わりの予感がした。
だからかな。彼の誕生日に、幼馴染みの健に飲みに誘われてOKしてしまったのだ。
幼馴染みといっても、母親同士の仲が良くて、家族ぐるみで遊んでいたメンバーの一人。しかも三つも年下だから、弟のように接していた。
ただ大人になってからも連絡を取り合ったのは健だけ。そのため、お互いの近況については筒抜けだった。
だから彼の誕生日の前日に健から連絡が来ても、さほど驚かなかった。
『明日の夜さ、久しぶりに飲みに行かない? いいお店を見つけたんだ。愛奈が好きそうなカクテルが美味しいお店』
康弘に断られた後に健に愚痴の電話をしたから、きっと私が寂しい一人の夜を過ごしていると思ったに違いない。
健って昔から私が居心地良く過ごせるようにしてくれる。本当に弟だったら楽だろうな。
「……奢ってくれるなら行く」
『お前ね……確実に俺より給料高いくせに何言ってんだよ。まぁいいよ。じゃあ明日19時に駅で待ち合わせ。いい?』
「わかった」
『じゃあ明日な』
「あっ……健!」
『ん?』
「あ、ありがとう」
『それは明日の食後のセリフだろ? まだ早いよ』
わかってるくせに……。一人にしないでくれてありがとうって言ったのよ。
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