ときめきなんて想定外

2/6
前へ
/6ページ
次へ
* * * *  付き合って一年。これまで予兆はあった。最近会えなくなってたし、康弘(やすひろ)からの連絡も減っていた。極め付けは、彼の誕生日に仕事が入ったと言われた時。何故かわからないけど、終わりの予感がした。  だからかな。彼の誕生日に、幼馴染みの(たける)に飲みに誘われてOKしてしまったのだ。  幼馴染みといっても、母親同士の仲が良くて、家族ぐるみで遊んでいたメンバーの一人。しかも三つも年下だから、弟のように接していた。  ただ大人になってからも連絡を取り合ったのは健だけ。そのため、お互いの近況については筒抜けだった。  だから彼の誕生日の前日に健から連絡が来ても、さほど驚かなかった。 『明日の夜さ、久しぶりに飲みに行かない? いいお店を見つけたんだ。愛奈(まな)が好きそうなカクテルが美味しいお店』  康弘に断られた後に健に愚痴の電話をしたから、きっと私が寂しい一人の夜を過ごしていると思ったに違いない。  健って昔から私が居心地良く過ごせるようにしてくれる。本当に弟だったら楽だろうな。 「……奢ってくれるなら行く」 『お前ね……確実に俺より給料高いくせに何言ってんだよ。まぁいいよ。じゃあ明日19時に駅で待ち合わせ。いい?』 「わかった」 『じゃあ明日な』 「あっ……健!」 『ん?』 「あ、ありがとう」 『それは明日の食後のセリフだろ? まだ早いよ』  わかってるくせに……。一人にしないでくれてありがとうって言ったのよ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加