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「うーん、素晴らしく頭の悪いルールで動いているね!
おまけに不器用極まりない!間違いなく損するタイプの人間だ!」
我ながらそのとおりだと思うが、こいつに言われると腹が立つ。
「OK、ケンくん、願い事、間違いなく受け付けたよ。」
「そうか。」
返事をすると、右手から赤い小さな球が飛び出てきた。
飛び出した赤い球はスズキの手元の手帳にぶつかって消えた。
「サインも頂いたよ。」
スズキが開いて見せた手帳のページには、赤い判子の印のような
謎の模様がついていた。
「願い事は今夜キミが寝て、次に目が覚めてから有効になるよ。
そしてそれと同時にボクに関する記憶も、願い事をしたってことも
記憶からなくなるから。」
「そうなのか?」
「ふふふ、大丈夫。記憶を消してインチキしようってことじゃないよ。
まあ、きちんと願いが叶えられたかどうかの検証がないのは不安だろうけど、
このことを覚えていられると色々面倒でね。」
アクマに願いを叶えてもらったなんて話を聞いたことがなかったが、
こういうことがあるなら、結構ある話なんだろうか。
「ボクはアクマだから願い事を叶えてもらえるなんて欲望を掻き立てる噂はどんどん広めたいんだけど、ボクの上司はそれを望んでいないみたいでね。」
「まあ、神社にお参りしたくらいに考えておくよ。」
「うーん、素晴らしく割り切った考え方だが、
ちょっと年寄り臭いかなぁ。」
「ほっとけ。」
「ふふふ、それじゃあケンくん、ここで失礼するよ。」
スズキはベンチから立ち上がると
「そうそう、ひとつ忠告を。」
と言ってポケットから何かを封筒を取り出した。
「ちょっとしたサービスだよ。キミの親父さんは死んではいないよ。
ただ不幸ってほどでもないが、一人で寂しく生きている。」
スズキに渡された封筒を開ける。中には折り畳まれた紙が何枚か入っている。
レポートのような形式で父親のことが書かれている。
「それとケンくん、人間を悪魔にするのは結構手間でね。本人に邪な意志がなければ出来ない事さ。キミには多分無理だよ、安心したまえ。」
声の方を見ると、すでにスズキの姿は消えていた。
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