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他の働きアリが怒ったり、途方に暮れたりするなか、ノリオはそう事態を重く見ていませんでした。ノリオはノリオなりにある計画の実行にはちょうどいいと思ったからです。
「やあ、ノリオ。これからどうするんだい」
ノリオに話しかける1匹の働きアリがいました。ホリオです。彼はその名に相応しい、巣穴を掘るのが上手な働きアリでした。
「ぼくには考えがある。君はどうするんだ」
「ぼくはもちろん新しい女王様を見つけて、そこで働かせてもらうつもりだけど。考えって?」
「ぼくはね、1人で生きていこうと思う。独立だ。ぼくは自分で巣穴と餌をこさえて生きていくんだ」
「驚いた。宛はあるのかい」
「うん。いつもの餌場の反対側にちょうどいい花が咲いているところがある。ちょっと見たところ、花の蜜とかアブラムシもいそうだったねえ。ニンゲンもほとんどいなかった」
「うーん、ぼくは新しい女王様のところで働いたほうがいいと思うけど」
「いいんだ。ぼくは疲れた。ぼくはぼくの体と頭と、思うように生きていく。それじゃあ、元気で」
ホリオを背に、ノリオは目当ての場所までずんずん歩いていきます。
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