働きアリの暇

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ノリオが起きたのは、いつもの起床時間よりも大分遅れていました。それは太陽がいつもより高く昇ってたり、ノリオの感覚として遅い時間なんだろうとなんとなくわかっていたのです。 早速、腹ごしらえのために花を探しました。実際ノリオが見つけた場所は良いところで、そこにはコマツナの花がたくさん咲く場所でした。 ノリオが蜜を食べようと花に登ると、隣の花にミツバチが飛んだ来ました。 「こんにちは、アリさん。餌集めですか」 ミツバチは陽気に話しかけてきます。 「こんにちはミツバチさん。ええそうです。ぼくは餌が欲しいんです」 「ええ、ええ。その蜜を取っていくとよろしい。ここの蜜は良い蜜ですから」 お互いに作業と食事を黙々と続ける中、ノリオはミツバチに話しかけてみたくなりました。 「ミツバチさんは、お仕事ですか」 「ええ、もちろん。あなたも仕事ではないのですか」 「ぼくは、ぼくの女王様の巣が壊されてしまって。今はぼくのために餌を集めています」 「それは随分と気の毒だ。新しい女王様を探すのですか」 「いいえ、しません。ぼくは働くことに疲れました。1人で生きていこうと思います」 「それは、そんなことができるのですか。働いていたほうが良いと思うのですが」 ノリオは少し頭に来ました。ホリオにも同じことを言われて、どうしてみんな同じことを聞いてくるんだろうと不思議に思います。だから、少し意地悪してミツバチに聞いてみたくなりました。 「ミツバチさんはどうして働くのですか」 「それは、女王様のためです」 「どうして女王様のために働くのですか」 「それは、子孫を残すためですよ。子孫を残せるのは女王様しかいないからです」 「どうして子孫を残したいのですか」 「当然だからです。命題だからです。何も子孫を残したいのは僕たちミツバチだけではありません。アリだって、魚だって鳥だってニンゲンだって、みんな子孫を残すために生きています。アリさん、あなたは少し疲れてるんじゃないか。よく考え直したほうがいい」 そう言い残して、蜜を蓄えたミツバチは空に飛んでいきました。 (ミツバチはばかだ。どうしてみんなそんな必死になれるんだろう。ぼくが頑張って餌を運んだって、巣穴を掘ったって、女王様はぼくを褒めてくれるわけじゃない。子孫を残すっていっても、ぼくは直接子孫を残さないし、子孫を残すために交尾するアリだって、交尾した後すぐに死んでしまう。ばかばかしい。今までのぼくもばかばかしくておかしかった。でもこれからはばかばかしくない。やっぱりぼくはぼくのために生きるんだ) ノリオはミツバチに勝ち誇った気になって満足していました。どうやらお腹も同じようです。
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