15人が本棚に入れています
本棚に追加
手記その1
「私のしたことは間違っていたのか?いいや。間違ってなんかいない。私は芸術の正義のためにあいつに刃を向けたのだ。私に非があるという者がいたら、論破してやる自信はある。
それにしても、芸術のわからない奴が、どうして美術品を買いあさるのだろう?金にものを言わせて、美術品の価値もわからない奴が、おもちゃを手に入れた子どもようにはしゃぐ。そんな醜態を晒して恥ずかしくないのか?美術品があまりにも不憫でならない。
彼らが美術品を私物化することには断固、反対だ。私は画家として、芸術の発展の一翼を担ってきたと自負している。そして、誰よりも芸術を尊敬し、美術品を愛でてきた。
そんな私の努力の甲斐も虚しく、私の代表作である「ブルームーン」はあの男の手に渡ってしまった。「ブルームーン」を護れなかった自分が情けないし、忸怩たる思いだ。
だから、だから、私は覚悟を持ってやらねばならない...」
最初のコメントを投稿しよう!