手記その1

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手記その1

「私のしたことは間違っていたのか?いいや。間違ってなんかいない。私は芸術の正義のためにあいつに刃を向けたのだ。私に非があるという者がいたら、論破してやる自信はある。  それにしても、芸術のわからない奴が、どうして美術品を買いあさるのだろう?金にものを言わせて、美術品の価値もわからない奴が、おもちゃを手に入れた子どもようにはしゃぐ。そんな醜態を晒して恥ずかしくないのか?美術品があまりにも不憫でならない。  彼らが美術品を私物化することには断固、反対だ。私は画家として、芸術の発展の一翼を担ってきたと自負している。そして、誰よりも芸術を尊敬し、美術品を愛でてきた。  そんな私の努力の甲斐も虚しく、私の代表作である「ブルームーン」はあの男の手に渡ってしまった。「ブルームーン」を護れなかった自分が情けないし、忸怩たる思いだ。  だから、だから、私は覚悟を持ってやらねばならない...」
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