第三章 生徒会

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「あづい……」  生徒会室の中で扇風機の前に座り、そう零すのは珠喇。面倒くさそうに眉を顰めてその暑さを呪っていた。  まだ七月にもなっていないのにこの暑さ。いや、春と比べてその暑さにまだ慣れていないだけか。 どのみち珠喇にとってはどうでもいいことで、その暑さだけがただただ憎かった。  ピッ。とクーラーを付けるのは香偲。 すかさず順がそれを睨むが、香偲は「まーまー」なんてリモコンをひらひらと振っている。 「ここ日差しめっちゃ入って暑いじゃん?温度もそんなに低くしてねェし、たまにはいーだろ」 「そう言って昨日もつけてただろ」 「……うるせ」 「今なんて言った」 「何も言ってませェん」  順が眉を顰めてそんな香偲を睨み付けていると、生徒会のドアがカラカラ、と音を立てて開いた。 「おはようございます」 「おはよう、シエ」  ソファに座った愛が微笑みかける。そして竜也の存在に気付くと、「あら」と首を傾げた。 「伊藤くん…よね?今日からよろしく」 「あ、うん。よろしく」 「理央さんとアヤカさんがまだ来てないんですね」  生徒会室を見渡してシエがぽつりと呟く。 すると生徒会室のドアがガラッと勢いよく開き、青に一束だけ黒くした髪をした男子高生がその勢いのまま入ってきた。まっすぐ竜也に向かっている。 なぜか感じるその圧に押されるように竜也は後ろへと下がっていく。 「な、なになに……!?」 「てめぇ!」  男子高生は竜也の胸ぐらを掴むとグイッと引き寄せる。そして耳元に顔を寄せた。 「てめぇ、会長に惚れてんじゃねぇだろうな?」  竜也の思考が止まる。 え?は?と疑問しか浮かばない。この男、急に現れたと思いきや何を言っている? 改めて見てみると、それは生徒会会計、林 理央(はやし りお)だった。  確か普段はとても明るく生徒会でなければ学校の人気者だったであろう性格の筈だが。 「ごめんね〜!理央っちが暴走しててさ〜」  二人分の鞄を持って入ってきたのは、ピンクの髪の女子高生。彼女は川田(かわた) アヤカ、生徒会書記だ。  彼女もまたとても明るく生徒会でさえなければ友達も多かっただろう。 理央とアヤカ、二人はセットでいることが多く、双子のように仲がいいらしい。  アヤカは苦笑いで両手を合わせ「ごめんね!」と謝るとその理央の腕を引っ張る。 「もー、だめだよ理央っち!ほら、困ってるから!」 「てめぇ!はっきり答えやが」 「違います」 「やっぱりそうじゃ……え?」 「違います」  無表情で首を横に振る竜也と、ただ驚いている理央。むしろどこを見てそう思ったのか。  しかし理央は途端にほっとした笑みを浮かべると「なんだ〜」と打って変わって明るくなった。 「そんな事なら早く言えよ〜!」 「いや言う暇なかっ」 「しょうがねぇ奴だなもう〜!」  なんかこう、イラッとくるな。 朝から胸ぐらを掴まれたせいか腹が立ってきた。 ネクタイを直してさっさと椅子へと座る。  シエはため息を吐くと「なんとか揃いましたね」と話を切り出した。
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