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真っ白で綺麗な校舎。それらは真ん中の噴水を囲うかのように三つ建っていた。
その噴水の奥、校門から見て真正面にあるその校舎に、生徒会室はあった。一番上の、一番奥。人を避けるようなそんな場所にある生徒会室に、夏にしては爽やかな風が入った。
背中までの綺麗な金髪が、その風に靡く。なにかに気づいたようにその女生徒は窓を振り返ると、そのまま黙り込んだ。しかし彼女自身それが何かは分からないらしく、やがて首を傾げてしまった。
「会長?」
順の声に生徒会長、清川 シエは振り返ると、いえ、と小さく首を横に振る。
愛はその様子を少し気にしながらも、さてと微笑んだ。
「今日はどうしましょうか」
愛のその言葉に薄い金髪、檸檬色のような髪をした男子生徒、朋以 香偲は携帯を取りだした。いつも通り狐のような目をして、にまりと口角を吊り上げる。
「んじゃ、いつも通りグループに送るぜ」
そしてその場にいる五人の携帯がメッセージを知らせるように音が鳴った。
そのメッセージを開くと同時に、香偲は言葉を続ける。
「オレが調べた通りなら、今日はこの辺だろうな」
画面を見ながら香偲がそう言うとシエも小さく唸りながら、可能性は高いですね、と頷いた。
「最近、なぜかこの辺りに集中しているようですし」
「なら配置はいつも通りでいいですね」
順はメガネを人差し指で上げながら辺りの人物を見ていく。
「山口は俺と、朋以は静川と、ここに居ませんが川田と林はいつもの場所で待機するよう言っておきます」
それと、と順が話を続ける。
「会長はここをお願いします」
「……分かりました」
そうは言うが、シエは目を伏せて何かを思い悩むように小さく眉をひそめた。
それに気付かず四人は動き始める。
静川、と呼ばれた男子生徒は静川 珠喇。黒髪で、耳元の毛束がぴょこんと跳ねている。それと、目がぱっちりとしている事もあり、見た目は可愛らしいものだ。
持っていたゲーム機からゲームオーバーを知らせる音が鳴り、珠喇はその見た目に似合わず不機嫌そうに舌打ちを零す。そしてそのゲーム機をソファへと投げ捨てると、扉に向かって歩いていく。
「めんどくさいなー。せっかくいい所だったのに」
「まーまー。落ち着けよ珠喇」
香偲は親しげにその肩に手を回すと、にやりと怪しく笑った。
「さっさと殺っちまえば終いだ」
「早急に片付けて戻るぞ。会長を長い間一人にはできない」
「ああ、もう少し人数がいればシエを守る役が作れるのに……」
順と愛の言葉にシエはいえいえ、と首を横に振って、気にしないでください、と苦笑いを浮かべる。
そして真剣な表情をしてその四人を見つめた。
「くれぐれも、見られないように」
そんな言葉にすら珠喇は、はいはい、と見もせずに軽く手を振ると、そのまま四人は生徒会室を後にした。
一人になったシエはゆっくりと窓に歩み寄ると、そこから校内を見下ろす。さっきの気配、あれは……。
「呪いの子が……居る……」
ならば、やることは一つ。
一刻も早く見つけなければ。
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