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重い瞼を上げる。見えたのは自分の足元。椅子に、座っているのか。う、なぜかお腹が痛い……。思い切り殴られたようだ。
同じように重い頭を持ち上げて、目の前の順に気付いた。
「起きたか」
「……生徒会、の……」
立ち上がろうとするが、体が動かない。まるでなにかに押さえつけられている様な…。
そこで、自分が縛られていることに気が付く。な、なんで!?
「悪く思うな。お前は危険すぎる。お前は二人もやっただろ」
思い出した。……俺は、なんてことを……。
動揺する竜也を落ち着けるように、愛が話しかける。
「落ち着いて。二人は無事よ」
「嘘だ!あんな傷で……!」
「治るっつーの」
香偲はソファに座りながら、そう言った。
体に着いた血を拭きながら竜也に顔を向ける。
「テメェも呪いの子なら分かるだろ」
「……も?」
「俺らもそうだよ。呪いの子。能力持ち。分かる?ていうかなんてことしてくれたんだよ、服汚れたし……」
「血って落ちにくいのよね……」
珠喇は不機嫌そうに体をゴシゴシと拭いていた。
順が振り返りながら腕を組む。
「今洗ってるだろ。文句言うな。そのせいで会長も避難しなければならなくなった」
「!あ、会長無事なの!?」
慌てて声を上げると、愛は、まずはそうね、と竜也に歩み寄った。そして手探りで竜也の頬に触れる。
「シエを助けてくれてありがとう。私たちが出てる間に襲われたみたいね。連絡もできなかったけど、貴方が逃がしてくれたから助けを呼べたのよ。
本当に助かったわ。シエは治らないから、危ないのよ」
「学校も安全じゃなくなってきたな……とうとうンなとこまで……」
香偲が悔しそうに眉を顰める。だが珠喇は竜也を呆れるようにジトリと見ていた。
「俺ら殺したのに会長の心配って……」
「!ご、ごめん……」
そして、はっと顔を上げる。
「……って、生徒会が呪いの子!?いやそんな気配一切……!」
「呪いの子同士はなにか感じると言いますが、そういう人もいるというだけです。事実、生徒会でも少し感じることが出来るのは私と理央さん、香偲さんだけですし。まあ体質のようなものですね」
シエは軽く目元を押さえながら生徒会室に入ってきた。順が、無理はせずに……と気を遣いながら歩み寄る。
「やっぱり、どこか怪我して……」
「あっいえ!そういう訳では……!」
「シエは男の子の裸が苦手なの。今ふたりとも服洗ってるところでしょう?だから避難してたのよ」
え、あ、そういう? ホッとすると肩の力が抜けた。なんだそれ。びっくりするじゃないか。
「先程はありがとうございました。私は未だ力が分からなくて、使えないんです……」
「いや、それは別に……ていうか、呪いの子って本当?」
「はい」
そう言うとシエは押さえていた手をそっと下ろした。
珠喇が、ちょっとシャワー浴びてくる、と言うと順は追っ払うようにしっしっと手を動かしていた。
「私はまだどんな力か把握出来てませんが……順さんは腕力がアップする様で、愛さんは手を握って想像することにより色んなことが出来ます。珠喇さんは鋭い刃を出して操り、香偲さんは防御、そしてここにはいませんが理央さんは空を飛べて、アヤカさんは物に触れることで情報を読みます」
す、すごい。しかも全員なのか。
呆気にとられていると、シエが、伊藤さんは?と首を傾げる。
竜也は思わず目を伏せた。
「えと、俺は……大鎌、出したり……」
「戦闘慣れはしてそうだったな。オレらより力も操ってた気がする」
香偲がそう言うと順は黙って頷く。
「……や、ちょっと……自分で特訓してて」
「すごい!尊敬します!」
シエが目を輝かせて顔を覗き込んできた。き、きらきらしとる……。
というか、会長……性格違いすぎない?もっとクールじゃなかったか?
するとそれを察したように香偲がにまりと微笑みながら教えてくれた。
「会長はそんなもんだぜ。全員の前では緊張してあんな感じだけどよ」
「は、恥ずかしいのでやめてください、強ばってるだけです!」
そうなんだ。てかめっちゃ仲良いんだな、生徒会って……。
そんな事を思いながら、竜也は、早く解放してくれないかな、なんて考えていた。
「と、とりあえず」
シエが改まるように、こほん、と咳をこぼした。
「提案があるんです」
「提案?」
「……生徒会に、入りませんか?」
「え。……え?」
ぽかん、とそのシエを見上げる。そしてそのまま、ゆっくりと目を逸らした。
「えと……あー……考えときマス……」
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