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それから、美香は彼を公園で見かける度に声をかけた。
やがて連絡先を交換し、そして交際も始まった。
そしてついには彼女の夫として、今もまだ正樹は美香の隣に居る。
「運命ってやつよねぇ」
呟き、そして恥ずかしさのあまり、その身をくねらせた。
くねらせながら視界に入った時計を見て、彼女は椅子から飛びあがった。
いつの間にか時間が流れていた。
「遅刻しちゃう!!」
朝ご飯を口の中に詰め込み、慌ただしく出勤の準備を始めるのだった。
夕方。
美香が帰宅し、夕飯の支度が整った頃に正樹は帰ってきた。
いそいそと出迎える美香。
「あなた、お帰りなさい」
「ただいま。疲れたよ……」
すらりとした美青年は、いつの間にやら随分丸っこくなった。あの頃細長かった背中もすっかり大きく、広くなった。
それでも、出会った頃から変わらず優しいし、美香を愛してくれる。
美香もまた、正樹の事を愛し続けていた。
荷物を受け取り、リビングに移動しながら美香は公園が無くなる話をした。
「そうなのか。残念だなぁ」
「そうよね。私達にとって、大切な思い出の場所なのに」
「もう、すぐになくなっちゃうのかい?」
「さあ? そう言う感じではなかったけれど」
「今度の休みにでも、行ってみようか」
「ええ、是非」
その日の夕飯は、正樹の好物がずらり並んでいた。
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