5人が本棚に入れています
本棚に追加
***
人は死んだら何処に行くのか?
これについては諸説ある、としか言えない。というのもその世界によって行く場所は違うし、対応の仕方も千差万別と言う他ないからである。
例えば俺やクボタがいたような“地球”という場所では、死んだらそれぞれの国や宗教に対応した“天国や地獄”に行くのが一般的となっている。ただし、実のところ天国や地獄というもののスペックは、生きた人間の世界と比べてさほど大きなものではない。なんせ、人間の数と比較して、死んだ人を裁いたり導いたりする“神様”やら“仏様”やら“獄卒”やら“天使”といった存在はあまりにも少ないからだ。ようするに、死んだ人間全部面倒見るのは無理なのである。よって、“よっぽどの大罪人”と“よっぽどの聖人”以外の人間達は、一様に別の場所に送られることが多いのだ。
ようするに、次の世界に転生するための、手続きをする場所である。
あまり素行が良くなかった人間は、やや厳しい世界への転生に限定され。そうでない人間は、ある程度自分の意思で次の転生先を決めるということができる。俺やクボタが務めるこの役所は、そんな人間達の異世界転生を準備・支援するために存在しているのだ。
罪人や悪人はそもそも次の世界を選ぶ余地が少ないため、、手続きそのものはわりとあっさり終わる。時々文句を垂れて暴れる奴もいるが、地獄に行かないようなレベルの罪人たちの多くはそれなりに罪悪感を持っていることも多く、あっさり自分達の来世を受け入れる人間も少なくないのだ。
問題は、その他大勢の一般人である。
簡単なこと、“次の転生先は自分の好きなところに行きたい”と喚き散らし、その望みが叶わないと逆キレして職員に当たる人間が少なくないのだ。
その原因は、現在俺達の故郷である“地球”や、それを含めた多くの世界で“異世界転生とは夢と希望にあふれたものだ”というイメージを植え付けるような漫画やアニメが溢れたことにあった。別にいいのだ、そういうものが流行しても。平凡な人生や苦境にあった人間が、転生してチート能力を得て無双し、今までの苦労を帳消しにするようなハピーライフを過ごす。キラキラしてて悪くない、と個人的には思う。ただし。
頼むから理想と現実は違うってことを受け入れてくれ、と言いたいのだ。
そもそも異世界転移先を、本当に“本人の希望通り”選べる人間なんかごくごく限られたものでしかない。なんといっても、人気の世界の倍率がヤバすぎるのだ。流行が好きになることと、“異世界といったら流行通りの世界に行けて当たり前”と思うことは雲泥の差がある。頼むから、“夢と魔法に溢れた中世ヨーロッパ風の異世界に転生させろ”とばかり注文をつけてくるのは本当に勘弁してほしいところだった。
ましてや。
「最近は、“世界”と“神様”にも問題のあるとこ増えてんですよねえ」
最初のコメントを投稿しよう!