親馬鹿につける薬ナシ!

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親馬鹿につける薬ナシ!

 よう、画面の向こうの人。  ……何きょろきょろしてやがる、お前だよお前。そう、今この小説を読んでるお前さんだ。他に誰がいるってんだよ。  この話を読んでくれたお前さんにな、ちょっとした相談があるんだ。聞いてくれねえか。その代り、俺らもとびっきりのビックリ情報を提供してやるからよ。  OK?おう、恩に着るぜ。じゃあ先にビックリな情報を教えてやる。  実はな。  俺は0歳の赤ん坊なんだわ。……あり得ねえって?赤ん坊がそんな喋れるわけねえって?は!これだから大人はよ!そういう思い込みがあるから視野が狭くなるんだぜ?  実は赤ちゃんってのは、生まれてしばらくの間は宇宙と繋がってるんだ。だから、幼児よりもいろんなこと知ってたりするんだぜ。動物と喋れるし、大人が見えないものも見える。そりゃまだハイハイしかできないのは事実だが、考える方見える方は結構いろんなことができるんだ。最近の赤ん坊はハイテクなんだぜ。  で、その俺様だが、双子の兄弟の兄貴でもある。  弟は現在、俺の隣で音の出るカエルのぬいぐるみをいじってる。なんでかって?俺達まだ寝てませんアピールをするためだ。だって寝ようとすると、アレが来るってわかってるからよ。  ああ、大人どもめ。なんでテレワークなんてものを導入した?  おかげでクソオヤジがずっと家にいるじゃねえか!今までは俺らが寝る頃に奴はまだ帰ってきてなくて、安心安全な“オヤスミ”が約束されてたってのによ!  ああ、ほらまた! 「なんだー拓斗(たくと)拓馬(たくま)。まだ寝てなかったんでちゅかー?だめでちゅよー、赤ちゃんはそろそろいい子で寝ないとー」  ドアが開いて顔を出したのは俺達の父親。こいつがたまらなくウザい!なんで赤ん坊と話すのに、ヒゲヅラのむっさいおっさんが赤ちゃん言葉で語りかけてくるんだ!しかも。 「はい、おやすみなさいのチュー!」 ――うげええええええ!  男は俺と拓馬のほっぺに、もろにちゅーをかましてきた。髭がじょりじょり当たる!きもい!赤ちゃんだってなあ性別はあるんだよ、可愛い女の子ならともかくなんでヒゲのおっさんとキスしなくちゃいけないのか!しかも自分達のオヤジ! ――た、耐えられねえええ!  俺の隣で、チューされた弟は完全に放心して固まっている。その手からころっとカエルのぬいぐるみが落ちるのが見えた。ああ、今夜もマモレナカッタ……。
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