親馬鹿につける薬ナシ!

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 *** 「由々しき問題だ。これはなんとしても解決しなくちゃいけねえ」 「そうだね、兄ちゃん。僕ももう耐えられないよ……!」  親父がいなくなったあとで、俺と弟はひそひそと緊急会議を行った。つまり、どうやって今後あの“おやすみなさいのチュー”から逃げるかという相談である。  ちなみに、俺達は言葉は理解しているが、まだ喋れるわけではない。弟との会話は多分大人どもには“だあだあ”だの“あうあう”だのとしか聞こえていないことだろう。 「実はな、今日丁度、保育園の凛久(りく)からいいネタを仕入れたところなんだ。この世にはあるらしいぜ……赤ん坊にも使える、催眠術なるものが!」  これはもはや、秘策を使うしかない。俺は弟に提案する。 「その催眠術を使うと、特定のシチュエーションでのみ、相手に幻覚を見せることができるらしい!」 「幻覚?具体的には?」 「あのクソ親父が、“おやすみなさいのチュー”をしたくなくなるようにすりゃいいんだよ!あいつ、俺らが可愛い可愛い赤ちゃんだからチューするんだろ?なら、寝る前の俺らの顔が“むさくるしいオッサン”に見えるようになれば……!」 「なるほど!生理的嫌悪が先だって、チューできなくなるってわけだね!?」 「その通り!」 「兄ちゃんかしこい!」 「フハハハハハハ!もっと褒めろ讃えろ敬うがいい!!」  問題は、その催眠術をどうやって調べるのかということ。が、これも方法は既に見つけてある。 「クソオヤジのスマホを使おう。あいつはしょっちゅう、トイレにスマホを忘れてくからな。しかも何時間もそれに気づいてなかったりする」  トイレからLANEしないで!としょっちゅう母に叱られてる父。多分今後も当面は反省せずに繰り返すだろう。 「パスワードかかってない?ああいうの」 「問題ない。どうせ俺らの誕生日とかだ」 「あー……」  案の定。翌日あっさり、俺達は彼のスマホを拝借することに成功。ロック解除にも成功することになる。  調べた催眠術はすぐに覚えて実行された。これで、俺達の安眠は確保されるはずである!
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