【妄想】2.危険な恋

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【妄想】2.危険な恋

気を取り直して……次の妄想。 残業が終わり、会社を出ようとした男は外が土砂降りの雨だと知り迷っていた。 このままずぶ濡れ覚悟で駅まで走るか。 それとも妻に車で迎えに来てもらうよう電話をするか。 だが、きっと電話をしたところであの鬼嫁は来るはずがない。 仕方なく駅まで走ろうとスーツを脱ぎ頭に被った。 「佐々木くん?」 振り向くと声をかけてきたのは上司である西島課長だった。 「西島課長、お疲れ様です。」 「ひどい雨ね。佐々木くん傘ないの?それなら駅まで一緒に入りましょう。」 「ありがとうございます。僕が傘持ちますよ。」 上司である西島課長は、人間的に素晴らしく僕も尊敬している。 それは僕だけに限らず、課の全員がそう思っているはずだ。 二人で入るには小さめの傘。 できるだけ西島課長を濡らさないようにと気を遣う。 ふと、隣にいる課長から良い香りがして僕はドキッとした。 僕は既婚者だ。西島課長が独身とはいえ変な気持ちを起こしてはいけない。 そんなことを考えていたら何もない所で躓き、西島課長に支えられた。 「大丈夫?」 「は、はい。すみません……。」 西島課長に支えられた時、腕に柔らかいものが当たった気がする。 なんとなくその手を見ると白い物がついていた。 ?! 西島課長を見るとホイップ入りメロンパンを片手に歩いていた。 「これ美味いんだよねぇ。」 ふくよかな体を揺らしながら僕を見る課長。 「もう一個あるよ。食べる?」 「いえ……大丈夫です……。」 なぜ僕は一瞬でもドキッとしたのか。 相手は男で僕は既婚者だ。 汚れたスーツの袖を見て鬼嫁の怒る顔が目に浮かぶ。 西島課長一人分の傘にほとんど入れないままずぶ濡れで駅へ向かう男であった。
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