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「手を握るって?なみちゃん僕の為に課長に気持ちを伝えてくれたの?ありがとう!」
「違う、違うっ。違うのっ!何でもないから!」
「なぁんだ。違うの?じゃあ、自分で行くからいいよ!」
全力否定の私をポカンとした顔で見詰めた歩はクルリと背中を見せて行ってしまった。
「課長~っ!おはようございます!わぁ、素敵なネクタイですね。めっちゃ格好いいです!あ、そうだ。始業前に見てもらいたいプランがあるんですけど!」
「おはよう……神成……今日も元気だな。あの、ちょっと待って……」
戸惑う兵藤をよそに歩は袖を掴むと「行きましょうっ!」鼻を鳴らして早足で遠ざかって行った。
その場に残された私は、昨日からの出来事に頭が痛くなり蟀谷を押さえて立ち止まった。
立ち止まったままでいると、再び誰かが肩をポンと叩いた。
「ひえぇっ!」またも奇声を上げて振り向くと、私の奇声に「わあっ!」と驚きで応える佐伯先輩がいた。
「そ、そんなに驚くとは思わなくて、ごめん」
「すみません。佐伯さんの所為じゃないです。こちらこそごめんなさい」
「どうしたの?何かあった?」
頭を下げ俯く私を心配気な目差しが見返す。
「いえ、何も……」
俯く私越しに遠ざかる男二人組をチラリと見やるのが分かる。
「あの二人?いつもお昼ご飯一緒にしてる子と兵藤さん?」
『あれ?佐伯先輩、兵藤さんの事知ってる?』思わず目を見開いた。
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