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歩は週に三回はこうして七海の分まで手作り弁当を用意して来ては一緒にお昼を過ごしている。
「歩、前にも言ったけど私の分まで作ること無いって」ビル屋上の企業向けの共用休憩スペースのテーブルに着いて、七海が半ば諦め顔で呟く。
「なみちゃん、そんな悲しいこと言わないでよ。付き合い長いんだからさ、食べるのも人助けだと思って。ほら、食べようよ」
中性的な顔立ちを微笑みで満たしながら弁当箱を一つ差し出すと、テーブルに置いた。
仕方なく差し出された弁当箱を七海が開ける――何となくの予想はしながら。
『やっぱり。相変わらず女子力満点なお弁当だわ……』
「さすがだね。毎回、歩は凄いと思うわ。私には無理だな」
「食べて。食べて。後でいつものよろしくね」
「うん……分かった。はぐ、もぐ……まあ、やっぱり美味しいよね。もはや当たり前だけど」
歩は毎回作ってきたお弁当の感想を七海に求めた。最初は『次回作の参考にする為』等と言っていたが、本当の目的を七海は知っていた。
「これだけ美味しいの作るんだから、もう持っていったら?」
「……ん」
「歩?どうしたの?」
歩は両手で顔を覆い俯いた。
「大丈夫かなぁ……課長のお口に合うのか自信無くて……どう思う?なみちゃん」
『歩……それじゃまるで恋する乙女だよ。はあ、私に無いものばかり持ってるなぁ、歩は』歩の乙女ぶりに羨ましさ半分、感心半分の七海は言葉を捜して晴れ渡る空を見上げた。
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