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「自信……無いなんて。私の方がよっぽど自分に自信持てないよ。大丈夫!歩のお弁当はめっちゃ美味しいから。これが美味しくないなら、兵藤……課長だっけ?その人の味覚がおかしいって。だから、自信持ちなよ」 七海が空を見詰めたまま、半分自分に向けているように呟く。 するとそれを聞いた歩が、顔を覆った手の指の間から目を覗かせて七海を見返す。 「ほんと?やっぱり僕の料理って美味しい?」 『……また、乙女な仕草して』七海は歩に目を向けて呆れながらも笑みを溢した。 「うん……で、課長さんのこと好きなの?」 『好き』という言葉が耳に飛び込むと、驚きの表情で顔を上げた。七海が見ると顔を紅潮させ、何か言おうと口をパクパク開いている。 「なみちゃんっ!いきなりそういうこと言わないでよ」 「なぁんだ。ほら~図星じゃない」赤面した歩を見ると、七海はついつい揶揄(からか)いたくなってしまう。歩以外の男性とはコミュニケーションどころか、会話さえ満足に出来ないのに。 「まあ……好きは好きなんだけどさ僕、見てくれは男だし、キモがられやしないかって思うと……これからも上司と部下の関係は続く訳だし」 俯き辿々しく話す様子を見て『やっぱり好きなんじゃない。本気か……』七海はそう心中呟き、同時に自分がまるで歩の姉みたいだな、と思った。
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