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少女は軽快に地下へ続く階段を降りて、自宅のドアに鍵を差し込み、開けた。 頭の上に乗った帽子(キャスケット)のつばをつまんで、一人がけの椅子の中央に設置された髑髏(ドクロ)の上に放り投げると、向かいの席にどかっと座った。 帽子乗せになっている髑髏は少女自身の頭蓋骨を採寸して彫刻したものだ。 今日は珍しく気分が良くて、骸骨を彫るよりもカンバスに向かった。 ここのところ興味を惹く事件がなくて筆が乗らなかったが、今朝のあのニュースを見てからインスピレーションの兆しを感じる。 青、オレンジ、緑、ピンク、紫、黄と勢いにまかせて色彩をぶつけた。 刷毛(はけ)(ひた)した赤の染料は少女に燃え上がる火を連想させた。 そうだ、Happy《楽しい》 holidays《休暇を》! だ! しかし―― 「まったく! (いま)々しい四と五と二十だ!」 少女は刷毛を床に捨てて、四、五、二十! 四、五、二十! と毒づきながら、机に置かれた彫刻刀を掴んで髑髏の一つに突き立てた。 しかたがない、あと三年の辛抱だ。それまでは髑髏の代わりになる相手を探すしかない。 かねてからの計画を実行に移す時が来た。目星は付けてある。 パソコンのディスプレイに表示されたスーツ姿の金髪男を見て、少女はにやりと笑った。
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