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then, after...
「ねぇ、やっぱりキスマークつけたい」
そう言うと彼は「ダメだって」と言って逃げる振りをした。
ふざけ合いながら彼をつかまえ、首筋に思い切り吸い付いてみる。
勢いよく吸いあげてはみたものの、男の人の肌にはなかなかキスマークが残らない。
「藍、今までキスマークつけたことないの?」
「うん」
こうやるんだよ、と彼が私の首筋に吸い付く。
鈍い痛みとともに、彼がキスマークを付け慣れていることを暗に知り、柔らかな嫉妬が滲み出る。
キスマークをねだるたび、きっと私は心を苦しくする。
あなたが、今はもう跡形もなく消えたキスマークを、何人もの肌に付けてきたことを想像して。
それは決して表に出ることのない、キスマークのミルフィーユ。消えゆく独占の証が重なるほど、女は秘密主義になっていく。
了
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