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I belong 2 u
「ねぇ、キスマークつけていい?」
彼は困ったように笑った。
「ダメだよ。バレたら困るの、自分だろ?」
その言葉に不満げに頰を膨らませて見せながら、心の中では冷静に「そうだよね」と思っている。
断られることなんかわかりきってた。それでも聞いてみたかったのは、万に一つの可能性にかけたかったから。
キスマーク=好きな人から愛されてる証、なんて素直に信じる年齢は過ぎた。キスマークはどちらかというと独占欲と、犬でいうところのマーキングのようなものだと思う。見えない相手に主張する手段、縄張りを知らしめる手段。この人は誰かに愛されている、属している……だから手を出すな、という牽制。
なんだよ、藍らしくないな?
そんな風に言う彼は、相手を独占したい、誰も手を出すなと主張したいほどの恋をしたことはあるのだろうか。
好きな人からのキスマークってすごく嬉しくて、会うたび付けてほしくなるの。なかなか会えない相手だと尚更なんだよね。キスマークに触れると安心できる。彼に愛された証がちゃんと体に残ってる、って実感するの。
馬鹿だよねぇ、アイツは大した意味を持たせてないと思うんだけどね。
キスマークがあるだけで、愛されてる、わたしは彼に属してる……って嬉しくなるの。だからいつも、ねだっちゃう。
そう教えてくれたのは、四歳上の従姉だった。
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